伊藤直樹大使の挨拶

令和3年10月26日
2019年10月に駐バングラデシュ日本国大使として着任してから早くも2年が経ちました。

この1年、新型コロナウイルスの感染拡大による、両国間の経済活動、文化交流や人的往来に対する影響は大きいものでした。しかし、こうした困難の中でも、本年3月に行われたバングラデシュ独立50周年及びムジブル・ラーマン初代大統領生誕100周年式典に菅義偉総理が両国関係の強化へ向けたビデオメッセージを寄せました。東京2020オリンピック競技大会の際にはバングラデシュから6名の選手団が参加し、ザヒド・アーサン・ラッセル青年・スポーツ担当国務大臣夫妻も来日されました。3月からYouTubeで行った「ジャパンフェスト2021」の試みも好評を博しました。更に昨年度、バングラデシュが世界最大の円借款供与国となりました(約3,320億円、約束額ベース)。コロナ禍においても両国間の友好協力関係が深化された1年でした。

7月にはダッカ襲撃テロ事件から5年を迎え、ダッカ日本人会狩野哲朗会長並びにダッカ日本商工会河合光会頭とともに、テロ事件でお亡くなりになられた方々に哀悼の誠を捧げました。この事件を風化させることなくバングラデシュの発展並びに両国関係の強化に一層邁進する意を新たにしました。

新型コロナの脅威に直面するバングラデシュ国民のニーズに応えるべく、7月から8月にかけて日本からバングラデシュに合計300万回分を超えるアストラゼネカ製ワクチンを供与しました。バングラデシュにお住まいの邦人の方々へもワクチン接種の機会が提供されるよう引き続き尽力いたします。

現在、ダッカメトロ、ダッカ国際空港(ハズラット・シャジャラール国際空港)の拡張、ジャムナ鉄道橋、マタバリ深海港など、経済成長著しい、バングラデシュを象徴するような大型のインフラプロジェクトの建設が着々と進行しています。中でも8月にはダッカメトロ6号線の試運転が実施され、2022年中の開通を目指しています。同時に、通関、海外送金、輸入決済や課税をめぐる問題など、日本企業の皆様の投資促進や事業の拡大につながるような環境の改善にも努力してまいります。

日本は最大の開発パートナーとして、今後もインフラプロジェクトを通じた地域の連結性の向上、更にバングラデシュひいてはインド太平洋全体の発展と安定に努力していきます。そして、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」という地域の平和、安定、繁栄のためのビジョンの実現に向けバングラデシュと実践的な協力を進めていく考えです。

「ロヒンギャ」難民問題の解決は、FOIPの実現という観点からも重要な課題です。しかしながら、2月のクーデター以降のミャンマー情勢を受け難民の帰還はより困難な状況におかれています。状況が長引く中で、コックスバザール難民キャンプにおける教育、スキル訓練、生計手段の状況改善は急務です。9月には、今後バングラデシュ政府と国連機関が難民のバシャンチャール島への移住について協力していくことが決定しました。日本も国際社会と連携しながら人道支援ならびに難民の帰還に向けた協力を進めてまいります。

来年の二国間外交関係樹立50周年を前にして、今月はじめに岸田新内閣が発足しました。岸田文雄総理はハシナ首相に対する書簡において、両国間の協力深化に努めることを述べています。日本政府としては、この周年の行事を通じ、当地でも日本文化の普及を通じた対日理解の一層の深化や人的交流の拡大に向け、精力的に取り組んでまいります。

大使館としても、今後ともバングラデシュにお住まいの邦人の方々やバングラデシュを訪問される皆様の安心・安全を旨とし、皆様のご意見・ご協力を頂戴しながらあらゆる分野で一層良好な我が国とバングラデシュとの関係の構築に力を尽くす所存です。

両国関係の発展のため、引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。