メールマガジン バックナンバー
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日本・バングラデシュ交流メールマガジン(第76号・2007/6/3)
―日本とバングラデシュの橋渡しのために―
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本メールマガジンは、当地在留邦人の皆様及び希望者に送付しておりま
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、編集部までご連絡いただければ幸いです。
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□ 目次 □
【1】最近の日本・バングラデシュ関係
[これから]
●
生け花デモンストレーション・セミナー(6月4日、5日、国立博物館)
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バングラデシュ高等教育勉強会(6月10日、日本大使館)
【2】青年海外協力隊リレー連載「モノをあげることの難しさ」
(17年度1次隊 理数科教師 高橋史顕)
【3】編集後記
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【1】
最近の日本・バングラデシュ関係
[これから]
●
生け花デモンストレーション・セミナー(6月4日、5日、国立博物館)
前号でもお知らせしましたが、6月4日(月)及び5日(火)、日本大使館及び国際交流基金主催による生け花デモンストレーション・セミナーを国立博物館にて実施します。3月に実施した生け花デモンストレーションはダッカで活動するバングラデシュ人の先生方によるものでしたが、今回は池坊の笹山・石山専門家に日本から来ていただき、デモンストレーション(4日)及びセミナー(5日)を実施します。バングラデシュでは生け花の人気が高く、更なる普及・浸透に向けて今年も機会を捉えては生け花行事を実施していきたいと考えております。プログラムは以下の通りとなっており皆様のおいでをお待ちしております。ご質問等がございましたら日本大使館広報文化班までご連絡下さい。
場所:国立博物館
日時:6月4日(月)17:30〜オープニング、デモンストレーション
場所:Shaheed
Zia Auditorium, National Museum
6月5日(火)17:30〜生け花セミナー
場所:Nalinikanta
Bhattashali Hall, National Museum
●
バングラデシュ高等教育勉強会(6月10日、日本大使館)
6月10日(日)、下記の通りバングラデシュにおける高等教育についての勉強会を開催することになりました。バングラデシュの教育についての現状や問題点等を理解するとともに、今後の教育支援を考える上で参考とするためのものです。ご関心のある方はどなたでもご参加ください。
第1回目はバングラデシュ工科大学(BUET)学長及びインデペンデント大学学長を講師に招き、1時間程度の講演の後、質疑応答を行いたいと考えています。教育は重要テーマの一つですので、多くの方にご参加頂き活発な意見交換の場にしたいと思います。参加を希望する方は6月7日(木)までに広報文化班の小澤まで事前にご登録ください。
記
1.日時:6月10日(日)17:00〜19:00
2.場所:大使館3階大会議室
3.講師:Dr.
A.M.M Safiullah(バングラデシュ工科大学長)
Dr.
Bazlul Mobin Chowdhury (インデペンデント大学長)
4.講演テーマ:・バングラデシュにおける高等教育の現状及び課題
・各大学の役割、国際化等
5.連絡先:日本大使館広報文化班小澤
yusuke.ozawa@mofa.go.jp
tel
02-8810087
fax 02-8826737
*講演は英語で行います。
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【2】青年海外協力隊リレー連載「モノをあげることの難しさ」
(17年度1次隊 理数科教師 高橋史顕)
この国に来て困ったことのひとつに、物乞いへの対応がある。この国には、物乞いを職業にしている人がたくさんいる。物乞い自体日本では一度も見たことがなかったが、この国にこんなに多く存在している理由は、宗教や文化的なものもさることながら、絶対的に仕事が不足しているということが大きいと思う。それに加え、幼い子どもを残して夫が蒸発してしまったり、病気や高齢、または教育を受けていないためにまともな職に就けないということも重なり、物乞いしか収入を得る手段がないという状況に陥っているようである。
この物乞いの人たちに対して、隊員はどのような対応をしているか。人それぞれではあるが、一切あげないという人もいれば子供用にキャンディを持ち歩く人もいる。状況に応じてお金を渡すという人もいる。また、家を訪ねてくる物乞いの人用に、自宅にお米を常備している人もいると聞く。
かくいう私は、現金を与えることに抵抗があるため、物乞い用にペンを持ち歩くようにしている。そしてペンをあげる際、少し説教をし、学校に行って勉強するよう促している。そのため、ペンをあげるのは時間に余裕があるときに限られるが、子どもや若い母親を中心に9割方は喜んでもらってくれる。しかし、中には「ペンは要らない」という人もいる。彼らにとっては、5年10年先の高収入よりも、今日一日の稼ぎのほうが重要なのだ。加えて、実際一生懸命勉強して読み書きができるようになったとしても、この国では仕事に就けるかどうかすら確証はない。したがって、私は学校に行くよう促すために「勉強すればいい仕事に就ける」と語ってはいるものの、そこに矛盾を感じていることも否めない。しかしながら、それが自分ができる、自分の中で一番しっくりいく策だと思い、今も続けている。
物乞いのみならず、家によく遊びに来るベンガル人の友人も、かつては来るたびに部屋の中を物色し「これほしい」と言ってきた。彼らにしてみれば、外国人の部屋で珍しいモノについて尋ねる「ついで」の軽い言葉だったのかもしれない。しかし、いろいろと理由をつけてしつこくねだられると、断り続けるのも嫌な感じがあり、またこちらの意思をベンガル語でうまく伝えられないもどかしさもあり、ねだられること自体が嫌だった。それが理由で、一時は彼らを家に一切入れない時期もあった。
このようなことが積み重なり、私は普段からあまりモノをあげないようにしてきたつもりである。一度あげ始めると、平等にしなければならないのでキリがないと考えたからである。とはいえ、改めて考えてみると、実際は結構多くのモノをあげてきたような気がしている。赴任時には日本からのお土産として扇子と日本茶、その後は不要な衣類や雑貨を中心にいろいろなモノをあげてきた。
このことについて、「不要なものを引き取ってくれるのだし、相手も喜んでくれている」と考えれば気持ちも落ち着くはずなのだが、何かたかられてるような利用されているような感じがして、どうもいい気がしないというのが本音である。実際、快くあげたというよりも、あまりのしつこさに負けたという部分もある。もちろん不要なモノしかあげていないのだが、とにかく変な理由をつけてきて、しつこいのだ。最後にはなぜか怒り出す始末で、手に負えない。これだけ「くれくれ」言われると、言われたからあげるというのも、言われたのを断るというのも、両方気分が悪い。
一方で、こんな友人たちも普段は気前がいい一面も見せてくれることもある。一番よくあるのが、タバコのやり取りである。スモーカー同士の間柄では、その人の地位に関わらず、しかも初対面であっても、自分のタバコを勧めてくれることがある。私も時々お返しにと手持ちのタバコを一本勧める。そんなやり取りが、スモーカー同士では日常的にある。しかし、時には初対面で二言三言話しただけなのに、図々しくも「タバコ持ってるか」とせびられることもあり、これは気分が悪い。もっとも、私が好んで吸っているのは「STAR」という安タバコなので、これを見せると向こうから「いらない」と言ってくるのであるが。
たまに友人からこんな言葉を聞く。「タカハシはいいヤツだ。・・・・・。それから、いろいろモノをくれる。」 私はこう言われると、最後の一言でガックリくる。彼らにとって「モノをくれる」は褒め言葉のひとつなのだろうが、私からすると、「モノが目当ての付き合いなのか」と思ってしまう。
彼らベンガル人の中には、「モノをくれる人=いい人」という感覚が少なからずあるようである。そもそもイスラムでは、裕福な者が貧しい者に施しをすることが美徳とされているらしい。この教えに則ると、貧しい人は恵んでもらって当然、裕福なのに恵んであげない人はよくない人、という感覚に彼らが至るのも自然なのかもしれない。そして、この延長線上にあるのが、外国人相手に法外な値段を吹っ掛けてくるリキシャ乗りや商売人だろうか。彼らは裕福な人からは料金を多くもらっても悪くないと思っている様子である。
また逆に、このこと故に、ある程度地位のある人たちは外国人相手にもモノをせびったりしない。彼らの中には、「私は恵む側の人間であって、恵まれる側の人間ではない」という意識があるのかもしれない。接し方も実にジェントルマンな人が多い。「生活が苦しい」と漏らしながらも、私の分までお茶代やリキシャ代を払ってくれる人もいる。正に「武士は食わねど高楊枝」である。
と、ここまでは「モノをあげる・もらう」ということについて、日本人とベンガル人の気質や感じ方の違いに注目し、不満混じりに述べてきた。ところで、タイトルの「モノをあげることの難しさ」について特に強く感じるようになったのは、こんな出来事があったからである。
先日、日本の知人の好意で、不要な文房具類を集めて日本から送っていただけることになった(発送後3ヶ月経っても届いていないのだが)。この話のきっかけは、私が物乞いの人たちにペンをあげる活動をしているということを小耳に挟んだかららしい。そんな私の手助けになればと、その知人はダンボール二箱もの文房具を送る手はずを整えてくれたのだ。
この話を知ったとき、私は正直迷惑に感じた。というのは、私がやっているペンを配る活動は、物乞いに対してマンツーマンでお話をして教育を受けることを勧めるのが目的であり、ペンを配ること自体が目的ではないからだ。ゆえに、私の活動ではペンを一本配るのにも結構な時間が掛かり、大量に送ってくれても配りきれないことは目に見えていた。余った分を後輩隊員に託して帰国するというのも、なんだか無責任である。
おそらく、この知人を含めた多くの日本人は、私が学校に文房具を持って行き、子どもたちに豪快に分け与えれば、私も含めみんな喜んでくれるはずだと考えているに違いない。そして、文房具をもらってうれしそうな子どもたちと一緒に写真に写っている私の姿を想像し、そうなることを期待しているだろう。私自身も、協力隊に参加するまでであればそう考えていたに違いない。
しかし、そうすることによってもたらされるであろう弊害については、これまで考えたこともなかった。日本にいた頃は、不要なモノを送ることによって途上国の人たちが喜んでくれるのであれば、単純に自分もうれしいと考えていた。そこで思考はストップしていた。しかしながら、協力隊に参加し、援助慣れしているといわれるこの国に来て考えるようになったのは、その後彼らがどうなっていくかということである。よく言われることではあるが、この国の自立を促すためには、モノを与えすぎてはいけないと思う。そして、これは国家レベルに限ったことではなく、個人のレベルでも同じことが言えるのではないかと思う。
このように言ってはみたものの、私が文房具をばら撒くことに対して感じる違和感は、残念ながら言葉ではうまく表現できない。これは、「自立を促す」とか「協力隊の役目」とか「平等ではない」とか、そういった言葉だけでは表しきれない感覚的なもので、うまく言えないのがもどかしいくらいである。
ここで、表現不足を補うために具体例を挙げることとする。この国では、学校にノートやペンを持たずに来る子どもがいるのは事実である。これに対して、「困っているならばペンをあげよう」という解決策もあるが、これではその場限りのものになってしまい、さらに依存心を助長する結果を招きかねない。このようなことから、これだけで終わるのではなく、この国のその後のことを考えた援助も必要だと感じているのである。実際、こういう子たちの親は、貧しいとはいえペンを一本買うお金(3タカ)くらいは持っているものである。そこで、親に教育の必要性を訴えるなどして、ペンを買う費用を捻出してもらうという解決策が考えられる。これがうまくいけば、その場限りにならず、その子が学校を卒業するまでずっとペンに困ることはないだろう。
このアイディア自体は私のオリジナルではないが、このような視点を持つようになったことが私の中での大きな変化であり、それによってモノをあげることは本当に難しいなあと思うようになった。もちろん、ここに述べたことは私個人が勝手に感じていることであり、他の方々が自らの信念を持ってペンを配って回るというのであれば、それに対してどうこう言おうという気持ちはないということを付け加えておく。
最後に、この国の物乞い文化には、おそらく帰国直前になっても馴染めないだろうなあと感じる今日この頃である。それと同時に、もしずっと日本にいたら、モノをあげる・もらうということについて、こんなに考えることもなかっただろうと思う。
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【3】編集後記
いよいよ大使館及び国際交流基金主催の生け花デモンストレーション・セミナーが近づいてきました。バングラデシュにおいて生け花文化を広めるべく広報活動に励んできましたが、快くポスター等を貼って頂けるカフェ等が多い等、反応は非常に良好です。31日(木)には本件に関する記者会見を実施しましたが、質疑応答がしばらく続く等、ジャーナリストの反応も良好でした。当日は少しでも多くの方々が来場し、生け花の魅力・素晴らしさを伝えられたらと思います。
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