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日本・バングラデシュ交流メールマガジン(第71号・2007/2/22)
―日本とバングラデシュの橋渡しのために―
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□ 目次 □
【1】最近の日本・バングラデシュ関係
[これまで]
●視覚障害者リハビリ開発機構支援(2月20日、ダッカ)
●バングラデシュ日本留学同窓生協会主催(JUAAB)ベンガル語スピーチコンテスト(2月19日、ダッカ)
●鳥インフルエンザ、ユニセフ研修プログラム(2月17日、ダッカ)
●井上大使政策講演(2月13日、ダッカ)
●雨水排水(詳細設計)無償資金協力(2月11日、ダッカ)
【2】青年海外協力隊リレー連載「バングラデシュからの洗礼、そしてその経験から感じたこと」
(16年度3次隊
村落開発普及員 坂本 貴則)
【3】編集後記
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【1】
最近の日本・バングラデシュ関係
[これまで]
●視覚障害者リハビリ開発機構支援(2月20日、ダッカ)
20日(火)、井上大使は視覚障害者教育・リハビリテーション開発機構(BERDO)に対する約88,996USドルの無償資金協力にサインしました。
BERDOはバングラデシュの障害者状況を改善すべく1991年に設立され、障害は社会の重荷ではない事を広め、障害者への能力強化、指導力開発、医療や雇用機会が十分与えられるべく活動しています。
BERDOは今回の無償資金を「音声図書館」の改築に使用する予定で、そこに視覚障害者のための録音室を作ります。さらに教育用のタイプライターやカセット複製器も用意する予定です。障害者がバングラデシュ社会のメインストリームに適応できるようにすることがこのプロジェクトの目的です。
バングラデシュにおけるNGOに対する援助に関し、日本は既に105のNGOに対し総額約880万USドルの支援を実施しており、NGOの草の根レベルの社会開発促進に大きく貢献しています。
本件に関するプレスリリースは以下のウェブサイトでご覧になれます。
http://www.bd.emb-japan.go.jp
●バングラデシュ日本留学同窓生協会主催(JUAAB)スピーチコンテスト(2月19日、ダッカ)
19日(月)、JUAAB主催のスピーチコンテストがダッカ大学のTSC講堂で行われました。このコンテストは2003年に始まり、今年はバングラデシュに住む日本、韓国、ネパール、インド、スペインの方が参加し大盛況に終わりました。当日はコンテストのみならず各国の文化行事も実施されました。
●鳥インフルエンザ、ユニセフ研修プログラム(2月17日、ダッカ)
17日(土)、バングラデシュ政府の中央及び地方関係者の啓発のための鳥インフルエンザ研修プログラム開始会合があり、井上大使、保健顧問等が出席しました。
資金は、日本政府がNYユニセフ本部に鳥インフルエンザ対策として約50億円拠出し、そのうち約2億円がバングラデシュ・ユニセフに割り当てられ、その一部が今回の研修事業に支出されます。
●
井上大使政策講演(2月13日,ダッカ)
13日(火)、井上大使はバングラデシュ外務省研修所で日本の外交政策及び日バ関係について講演しました。ジャフォール研修所副所長、イスラム外務省極東局長及び7人の研修生が出席しました。
井上大使は日本外交の3つの柱である日米同盟、国際協力、そしてアジア諸国との関係に加え、新しい柱である「自由と繁栄の弧」について紹介しました。
井上大使はバングラデシュ関係にも触れ、地域及び世界的問題への協力、開発協力、経済的関係、文化・人的交流について言及しました。
本件に関するスピーチは以下のウェブサイトでご覧になれます。
http://www.bd.emb-japan.go.jp/en/embassy/masayukiInoueSpeeches/foreignservice130207.html
●雨水排水(詳細設計)無償資金協力(2月11日、ダッカ)
11日(日)、日本及びバングラデシュ両政府は3,200万円の雨水排水無償資金協力に関する合意しました。井上大使とバングラデシュERD次官が交換公文にサインしました。
都市排水整備は重要かつ急務であり、日本政府は1991年から1993年にかけてダッカ市の雨水排水システム改善プロジェクトを支援しました。
本無償資金協力はコッランプール給水ステーションの給水能力改善、泥除去能力の強化及びその他必要機材の調達に使われます。
本件に関するプレスリリースは以下のウェブサイトでご覧になれます。
http://www.bd.emb-japan.go.jp
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【2】青年海外協力隊リレー連載
「バングラデシュからの洗礼、そしてその経験から感じたこと」
(16年度3次隊
村落開発普及員 坂本 貴則)
断食月のある日、二人の若者が自分を訪ねて、オフィスに来た。
「ちょっとお金がほしいんだけど、くれないか?」
事情も何も説明しないでいきなり要求されたので、当然断った。でもとりあえずお金がほしい理由を説明してと、二人に話した。
彼らが話したことによると、彼ら二人を含めて村の若者が何人かが集まって、サッカーボール大会を村で開催しているとのこと。試合は順調に行われ、残すところあと決勝戦だけだが、断食月に入ってしまって現在は一時中断している。「決勝戦はみんなが実家に帰ってくる、イードの日に行おうとしている。そうすればみんな集まっているし、みんなに楽しんでもらえると思って。」
それでも、若者がただ集まってサッカーをしているという光景はよく目にするので、「そんな若者だけが楽しむためだけのことに、お金は出せない」と断ると、「いや、これは若者だけのためにやっているのではない、村全体で楽しんでもらえるように考えた。俺たちはこの大会にあたって8つのグループを作ったんだが、それらのグループは、一つは若者グループ、もう一つは商売をやっている人たちだけで構成されたグループ、もう一つは、日雇い労働などをしている貧乏な家庭で構成されたグループ、もう一つは学生グループ、そんな感じで何グループかに分けて、村のいろんな家庭が参加できるように考えた。」
「でも、もう大会自体は始まっているんでしょ?一体何にお金が必要なの?」と聞くと、
「一位、二位のグループにあげる賞品を購入するお金が不足している。一位には白黒のテレビを、二位にはVCDプレーヤーをあげたいと思っていて。仕事をしている人たちから寄付を集めて、3200タカほどは集まったんだけど、まだ足りない。それであなたからもいくらか支援をしてほしいと思って、来たんだ。決勝戦には日雇い労働者のグループが残っている。彼らは賞品をもらえることをとっても楽しみにしている。」
そこまで聞いた自分は、なんだか嬉しくなってきていた。村に住む人間が楽しんでもらえるためにと思って企画してきたこと、そしてそれを安易に自分のところに支援を求めるんじゃなくて、自分たちでいろんな人から寄付を集めて何とかしようとしていたこと。ここバングラデシュに自分たちで頑張ろうとしている人たちがいるのだということに、驚きもしつつ、とても嬉しかった。
「どの村でそのサッカー大会は行われているの?」と聞くと、「あなたが住んでいる村です。私は同じ村の住民ですよ。」
自分が住んでいる家の近くの広場でサッカーをしている人たちを見かけることが何度かあったが、そんな風に企画を実施していたとは思ってもいなかった。なので、自分はお金を出すことに決めて、今は手持ちがないから今度払うというと、若者たちは、じゃあ、明日の朝あなたの家まで取りに行きますと答えた。
次の日の朝、若者二人がやってきた。自分は彼らに1000タカをあげた。彼らはありがとうといい、「決勝戦はイードの日だから。必ず見に来てください」と伝えて去って行った。
ところがである。
彼らがやってきたのを見たバリの人間が、「奴らは何をしに来た?お前、奴らに金を渡していなかったか?」と聞いてきた。「渡した。」と答えると「なんであんな奴らに渡したんだ?」と再び質問をしてきた。なので、彼らから聞いた話を伝えて、そのサッカー大会がいいと思って、村の人たちが少しでも楽しんでもらえたらいいなと思って寄付をしたと伝えると、「サッカー大会に寄付したというお前の気持ちはよいけれど、でも奴らはサッカー大会に関わっている人間でもない。仕事もせず、ぶらぶらしているような、ろくでもない奴らだ。」と言われた。そしてさらに「もしサッカー大会のために寄付を求めに来るんだったら、サッカー大会に関わっている全員がきて、お前にお願いしにくるのが筋だ。奴らはお前からお金を巻き上げて、自分たちのものにするだけだ。奴らはお前を欺したんだ。なぜ、お金をあげる前に俺たちに相談しなかった。相談してくれていれば、奴らがちゃんとしたやつかどうか教えてあげることが出来たのに。」と言われた。
自分が彼らからお金をだまし取られたという話は、近所の人たちに伝わったようで、近所の人たちに会うたびにお叱りを受けた。その何日か後までに、同じ話を何度も何度も。そして同じバリに住む人は、「お前からお金をだまし取ったことも許せないが、どうしようもないだめな奴らが、教育レベルの高い人間の住む、このバリの敷地を汚したことも許せない。」とも話していた。
そしてその話は自分が住む家の大家である、自分が働いているプロジェクトの
スタッフの一人にも伝わったらしく、彼は若者たちに怒り心頭に発し、今度村に行って、奴らに会い、怒って怖がらしてやる、と言っていたそうだった。
イードの日、大家であるそのスタッフもバリに戻ってきた。そして、戻ってきたすぐ、彼ら若者のもとへ向かい、予告通り彼らに叱り、もしお金を返さなければお前たちを警察に突き出すと脅したそうだ。
結果として、お金は戻ってきた。
イードの次の日、ダワット(食事の招待)を受けに行ってきた帰り、二人の若者の内の一人と出会い、彼がお金を返した。「なんで欺した?」と問いつめても、口を閉ざしているだけで答えない。その時周りにいた人間が、「サッカー大会がイードの日、出来なくなったから、それで返すことになった。」と説明した。本当は違うだろう、最初から欺していたんじゃないのかと言いたかったが、人の目の前で叱るということは、よくないと聞いていたし、おそらく村の人間に散々文句を言われただろうからと思って、「わかった。」とだけ答えて、お金を受け取った。
お金を返してもらったと言うことを、バリの人たちに伝えると、「とりあえず、よかったな。私たちのバリはシッキト(教育水準の高い人)を多く輩出するバリだと、周囲からも一目置かれている。私たちのバリからは学位取得の人間が5,6人いるが、そんなバリは村で探したっていやしない。村でやっとそれくらいの人数がいるくらいだ。だから私たちが、怖がらせれば、当然怖がるだろう。」と言っていた。
村に住むようになってもう7ヶ月が過ぎた。しかし、村にどういう人間がいて、それぞれがどう関係しているのか、そしてその関係の中、自分たちをどういうふうに位置づけているのかということは、なかなかわからない。今回のごたごたで、その一部分を垣間見ることができたような気がする。
一見平和でのんびりしているような村であっても、実は色々なもめ事、複雑な人間関係があったりする。それは今回の出来事だけでなく、活動をしていて感じるときもある。政治的・経済的な利害や、そして意外にも男女関係でもめていたりもする。
また、この国では教育というのが、それ自体価値があるということよりも、教育を積むことによって得られる、人間関係、つまり教育レベルの高い人は、同じカレッジや大学で学んだ知人友人が、現在何かしらの有力なポストに就いていたり、政治屋や警察などの職に就いていたりすることによる人間関係、もしくは学業を終了した後、勤めながら得られた人間関係を利用しているという感じがする。
今回大家であるスタッフが怖がらせることが出来た理由として、彼は日本のプロジェクトに長く関わっていて、外との交流の範囲も広い。おそらく警察で働く知り合いもいるだろう。そういうことが村人にもわかるので、実際に強制力を発したのだと思う。これが私であったり、外に繋がりのない人間の言うことであったりしたら何も怖がらなかったはずだ。
また、男にとっては結婚も人間関係をつくる、手段の一つだと思っているところもある。単にその女性が気に入ったからという理由だけでは、結婚に踏み切らない。彼女の父親が何をしているか、親戚が何をしているか、どういう人間であるかなどの情報を慎重に集めて、結婚する。
バングラデシュは、良い国だと思う。みんな明るいし、親切だ。子どもの笑顔もかわいい。けれどそれだけではない。昔読んだ、西川麦子さんの著書『バングラデシュの生存関係』に書かれてあったことで、詳しい内容は忘れたが、ここの人たちは、わざともめ事を起こし、人を陥れようとするというようなことが書いてあった。その時はそんなこともあるのかと、流していたが、そういうことを少しは感じさせられた出来事だった。
そしてそのもめ事の処理を巡る、人間関係とバリの人間の意識。
色々村人に説教されたが、それを通してみることが出来た、色々な感情は勉強になったなと思った。
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【3】編集後記
19日、ダッカ大学のTSC講堂で行われたベンガル語スピーチコンテストに行ってきました。21日の母国語デーを記念する行事で毎年実施されており、今年も立ち見が出るほどの盛況ぶりでした。バングラデシュの人々のベンガル語に対する思いは予想以上に強く、自分の日本語に対する姿勢を考えさせられた一日でした。
(在バングラデシュ日本大使館広報文化班 小澤裕輔)
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