メールマガジン バックナンバー
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日本・バングラデシュ交流メールマガジン(第65号・2006/9/14)
―日本とバングラデシュの橋渡しのために―
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□ 目次 □
【1】最近の日本・バングラデシュ関係
[これまで]
●肥料工場(DAP-2)稼働式(9月12日、チッタゴン)
●EPZインフラ整備支援承認式(9月7日、サヴァール)
【2】青年海外協力隊リレー連載「希望の家」
(平成16年度2次隊 青少年活動 吉田奈奈)
【3】編集後記
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【1】最近の日本・バングラデシュ関係
[これまで]
●肥料工場(DAP-2)稼働式(9月12日、チッタゴン)
9月12日、ジア首相臨席の下、肥料工場(Di-Ammonium
Phosphate
2)の稼働式が行われました。本プロジェクトの総費用51億9千万タカのうち、日本政府は38億8千万タカを支援しました。
新工場はDAP-1及びDAP-2の2ユニットから成り、1日当たり50万トンの肥料を生産します。これにより、バングラデシュの輸入依存を軽減することに貢献します。
●EPZインフラ整備支援承認式(9月7日、サヴァール)
日本政府は、バングラデシュ国内5EPZ(ダッカ、チッタゴン、カルナフリ、コミラ、アダムジー)におけるインフラ整備を支援するため、約29億6千5百万タカの見返り資金使途を承認し、9月7日、アシュラフ・アブドッラ・ユスフBEPZA長官と井上正幸駐バングラデシュ大使出席の下、ダッカEPZにおいて関連文書の受渡式が行われました。
バングラデシュ政府は、更なる経済発展のために投資環境の整備に努力しており、この日本の見返り資金はEPZ内の基礎インフラ整備を通してその努力を支援するものです。
日本の見返り資金援助は債務救済無償支援からなりますが、これまで日本政府がバングラデシュに対して供与した債務救済無償見返り資金は、約1510億タカに相当します。
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【2】青年海外協力隊リレー連載「希望の家」
(平成16年度2次隊 青少年活動 吉田奈奈)
私の任地マイメイシンに「アシャニール」という知的障害児のための家がある。ここにはみんなのお兄さん的な存在の“ショハグ”、「これは何?」と質問好きな“バピ”、大きな目が特徴的な“リコ”、寝るのが大好きな“ラッセル”の4人の子どもが住んでいる。また、週に4日、デイケアで外部からも子どもたちがやってくる。週に1日は思春期の女の子、男の子のための集まりも開かれる。
マイメイシンに赴任して1年8ヶ月たつが、アシャニールを初めて訪問したのはつい最近のことだ。2度目に訪れたのはボランティアのなおみさんに会うためだ。なおみさんは日本人女性で約10年間、バングラデシュでボランティアを続けている。アシャニールには創立のときから関わっている。2度目に訪れたとき、通訳の仕事を依頼された。2週間後に日本からスタディツアーで訪問者が来るので、そのときにミーティングの内容を訳して伝えてほしいということだった。通訳なんて務まるのか不安だったが(なんせ私のベンガル語は関西弁訛り。バングラデシュに来た当初からあまり上達していないのだ)、できることがあるならと引き受けることにした。3人必要だったので、他の隊員にも協力してもらうことになった。
当日、会場の小学校に着くと、すでににぎやかな歓声が聞こえていた。その日はアシャニールで月1回開かれる「集いの日」。障害児とその母親が集まっていた。アシャニールに住んでいる子どもとデイケアに来ている子どもに加え、その他からも子どもと母親が来ているので、大人数だ。日本からの訪問者は19人。年配の方もおられたが半分以上が中・高校生だった。
子どもたちがお兄さん役のボランティアたちと遊んでいる間、母親たちは「分かち合い」というミーティングを行う。その名の通り、母親たちが自分たちの思いを他の人に伝えて共有するのが目的だ。私たちはこのミーティングの通訳をすることになっていた。10人でひとつのグループ。私はその中のひとつのグループに入った。最初のうちは、通訳・・・とまではいかなくても、要旨ぐらいは伝えられていたと思う。
「この集いに参加することで障害児を持つ母親たちと思いを共有できてうれしいです。以前はなぜ私の子どもだけが他の子と違うのかと嘆いてばかりだったけど、他の人と話すことで救われました」
「ここに来ることを子どもはすごく楽しみにしています。以前は引っ込み事案でしたが、明るくなりました」
「ここでは誰もが親切にしてくれるので
、子どもたちは喜んでいます。子どもの喜びは私にとっての喜びです」
母親たちはこの集いに参加することの意義を述べていった。そしてこんな意見も。
「この集いの日を月1回だけでなく、月2回にしてもらえないでしょうか。なぜならこの門の中にいる間は平和に過ごせるからです。一歩外に出ると人々の冷たい視線が待っています」
それから周囲の人々の無理解さを嘆く意見が続いた。
「私は子どもが一人で外に出ないようにしています。以前、外に出てしまったとき、近所の人が私の子どもに石をなげつけました。私がその人に注意するとやっていないといいます。周囲の人にきくとその人が投げたというのですが」「私の家では兄弟がたたきます。それに親戚の態度も冷たいです」
守ってくれるはずの家族、親戚にさえも理解してもらえないという苦しみを抱えている母親がいる。そして、その後に続いた話を私はうまく訳すことができなかった。専門用語が並んだわけではない。単語自体はすごく簡単なものだった。
「服・・・池・・・投げる。悪い・・・食べ物・・・」
その母親の話の内容は私の想像を超えていた。予想外の受け答えに、ついていけなくなったのだ。後で話をして聞いたことを総合すると「アシャニールに来る以前は服も着ず、裸ですごしていた。服を着せようとすると池に投げ捨てて濡らして着られなくする。また、食べ物に対する執着心が強く、悪い食べ物でも何でも食べてしまっていた。しかし、ここに来るようになってから、服を着るようになったし、悪い食べ物も食べなくなった」ということだった。その子どもはデイケアに通っているのだが、ここに通うようになってから大きく変化したそうだ。
ミーティングの最後にみんなから2tkずつ集めていた。お茶代かなと思って見ていると、貧しくてここに来る交通費を出せない人へのカンパだという。みんな決して裕福とはいえない中、お互いに助け合う様子がみられた。
アシャニールのような家は世界100カ国以上にあり、ジャンバニエ氏によって始められた。バングラデシュではブラザー・フランクにより、4年前に始められた。アシスタントは4人。それ以外にここでは多くのボランティアが働いているのが特徴的だ。彼らの多くは高校生。アシャニールの近くの共同体「テゼー」では経済的な理由で高校に行くのが困難な学生の援助をしている。その学生たちがここに来て、子どもたちの相手をしているのである。支援を受けた人が他の人に支援の手を伸ばす。そんな優しさのリレーがここではみられる。
ここでフルタイムのボランティアをしているミントゥ君は今年、高校修了試験(HSC)を受けた。約一ヶ月後に結果がわかるという。試験に合格した後は、電気技師になるための勉強をしたいとはみかみながら話してくれた。将来どんな道を歩むにしてもきっと、ここでのボランティア経験が生きてくるだろう。それに外国人ボランティアの姿も見かける。前述のなおみさん(日本)はじめ、アイルランドから来たエリオノーラさん、オランダから来たマリアンさん。他、オーストラリア、カナダ、ドイツ・・・・・・国際色豊かだ。
このアシャニールの周囲には身体障害者のための施設やその女性部門の施設などの関連施設があり、ボランティアも一箇所だけではなく、様々なところで活躍している。普段は4人の子どもだけで静かだが、デイケアのある日はにぎやかになる。子どもたちを連れてきた母親たちは庭のベンチに輪になって座り、話をしたり、編み物をしながら子どもたちが戻るのを待つ。子どもたちは障害のレベルによってグループ分けされ、ボランティアと一緒におもちゃで遊んだり、絵を描いたりする。障害が軽く簡単な作業ができる青年たちはろうそく作りを行っている。このろうそく作り、理学療法も兼ねて運営資金の足しにと始めたそうだ。しかし、まだまだ収入源となるほどではなく、運営資金はほぼ寄付金でまかなっているそうだ。
先日、デイケアを訪れたら、子どもたちが笑顔で迎えてくれた。一緒に遊ぼうと手をつないでくる。おそらく、自分の味方かどうか感覚でわかるのだろう。無防備で甘えてくる。これまで障害者教育に携わったことがなく、どう接すればいいのか戸惑うこともあるが、子どもたちが楽しんでいるように私自身も楽しんで接することができたらと思う。
当初はこのメールマガジンで自身の活動紹介を行おうと考えていた。しかし、日本人ボランティアのなおみさんを通じて垣間見たバングラデシュの一面。「日バ交流メールマガジン」の名前にふさわしいのではないかと思い、紹介することにした。そして、何より障害児を持つ母親たちの思いに胸を打たれたからにほかならない。協力隊の中で障害者に関わる活動を行っている隊員もいる。いつか障害者がバングラデシュ社会の中で自然に過ごせる日が来ることを願ってやまない。
「アシャニール」。その意味は「希望の家」である。
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【3】編集後記
先日、シルポコラアカデミーで琴・尺八・笙の演奏会が開催されました。外国に暮らしてみて日本の文化に対する興味がムクムクと沸いてきた、というのは私だけではないでしょう。「懐かしい」という理由だけではないと思います。外国で紹介される日本文化は、外国の方にも関心を持ってもらえるような工夫がされていたり、現地のアーティストとのコラボレーションがあったり、と日本文化に対する私のステレオタイプを打破してくれることが多いのです。次の機会が楽しみです。
(在バングラデシュ日本大使館総務・儀典班 永瀬沙織)
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