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日本語の最新号及びバックナンバー

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   日本・バングラデシュ交流メールマガジン(第41号・2005/9/7)
        ―日本とバングラデシュの橋渡しのために―
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□ 目次 □
【1】宇喜多公使メッセージ「グリーン・ダッカ・クリーン・ダッカ」
【2】最近の日本・バングラデシュ関係

[これから]
●日本トレードフェア2005(9月8〜10日・ダッカ)
●災害対策セミナー(9月13日・ダッカ)
●第7回年次盆栽展(9月15〜18日・ダッカ)

[これまで]
●保健プログラムへの支援(9月4日・ダッカ)
●持続可能な農村開発セミナー(9月3〜5日・ダッカ)
●ダッカ廃棄物処理活動コンテスト(8月30日・ダッカ)
●「稲村の火」出版記念式典(8月30日・ダッカ)
●文部科学省奨学生渡日前オリエンテーション(8月28日・ダッカ)

【3】青年海外協力隊リレー連載・第5回

「アジアの哀愁漂うバングラ乗物―リキシャ―その行方」 (平成16年度1次隊・ハンドボール担当 我如古盛修)

【4】編集後記


【1】宇喜多公使メッセージ「グリーン・ダッカ・クリーン・ダッカ」

「グリーン・ダッカ・クリーン・ダッカ」。このような看板をダッカ市内でし ばしば見かけたことがあることでしょう。しかし、このような謳い文句を掲げ るだけでダッカにおいて清潔で快適な環境を実現できるとは誰も考えないで しょう。国民総数の13分の一に当たる一千万強の人口を有する巨大都市ダッ カは、世界中の多くの巨大都市と同様に、交通渋滞による大気汚染や莫大な廃 棄物、貧富の差の拡大といった問題を抱えています。

ダッカ市役所は、これらの問題に真剣に取り組んできていますが、税収不足、 政府補助金の減少による財源不足のために苦戦しています。ダッカ市役所は、 日本政府に対し、最も深刻な問題である廃棄物処理問題に係る支援を要請しま した。この要請に基づき、日本政府は、ダッカをより美しく快適な都市にする ためのマスター・プランを作成するために、優秀なJICA開発調査団を派遣しま した。今年3月、調査団はダッカにおける生活環境改善のための詳細なマス ター・プランを完成し、バングラデシュ政府に提出しました。

このプランで述べられているいくつかの提案を実行するために、ダッカ市役所 とJICAは、クリーン・ダッカ運動への地域住民の参加を促すよう、共同でキャ ンペーンを始めました。キャンペーンで地域住民の参加を呼びかけたのは、廃 棄物はそもそも最終的には個々人によって排出されるからです。したがって、 先ず第一に、地域住民の意識と行動が変わる必要があるとされたのも当然で しょう。

日本も莫大な廃棄物処理という問題に悩まされましたし、今でも同じ問題を抱 えています。日本の対策の一つに、3R政策があります。3Rとは、廃棄物の 発生抑制(Reduction)・再使用(Reuse)・再資源化(Recycling)のことで す。日本のように資源の乏しい国では、輸入した資源は無駄にすることができ ません。このキャンペーンは、日本の消費者やメーカーの間に段々と浸透して きています。

ダッカ市役所とJICAの共同キャンペーンは、ダッカ市内90地区に互いに競争さ せて優秀な地区には美しい盾と賞状を授与することにしました。8月30日、私 はクリーン・ダッカ・コンテスト表彰式に出席しました。賞は4つの部門に分 かれており、地域廃棄物処理賞、チャレンジ精神賞、初期収集努力賞、そして 最優秀キャンペーン賞が授与されました。コンテスト参加者は、地域単位の廃 棄物処理システムを通じて、廃棄物を集積所に運ぶことが求められました。

私は、式典に出席していた全ての受賞者の方々の生き生きと自信にあふれた表 情に深い感銘を受けました。このようなやる気に満ち溢れた姿勢が、彼らが住 んでいる環境改善への鍵となることと思います。

後日、私は「モア・グリーン・モア・クリーン」と書かれた看板を見かけまし た。これは文法的には間違っているかもしれません。でも、そのような些末に とらわれず、メッセージが訴えている心意気に目を向けようではないですか。

(バックナンバー)
http://www.bd.emb-japan.go.jp/jp/mailMagazine/index.html
(小冊子「日本とバングラデシュの橋渡しのために」)
http://www.bd.emb-japan.go.jp/jp/pdf/merumagabook.pdf



【2】最近の日本・バングラデシュ関係

[これから]

●日本トレードフェア2005(9月8〜10日・ダッカ)

9月8日(木)から10日(土)の3日間、ダッカ・シェラトン・ホテルで、日 本・バングラデシュ商工会議所(JBCCI)主催、日本貿易振興会(JETRO)及び

大使館後援による「日本トレードフェア」が開催されます。 http://www.jetro.go.jp/bangladesh/eng/link_files/upcoming_events.html
また、本会場とは別に、同ホテルのボールルームで以下のイベントが行われま
すので、お気軽にご来場ください。
8日(木)10:00 開会式
      14:00 日本バングラデシュ・ビジネスフォーラム
詳細は http://www.bd.emb-japan.go.jp/jp/content/banglaseminar.html をご覧くださ い。
9日(金)09:00 生け花・盆栽コンテスト
      14:00 柔道・剣道・空手デモンストレーション
      15:00 日本留学説明会

なお、大使館は今回、日本留学に興味がある方への説明会の他、日本の政治・
経済・文化を紹介するブースを出展します。また、大使館、JICA、JBIC、
JETRO共同で日本のODAを紹介するブースを出展します。

(JETROダッカ事務所)
http://www.jetro.go.jp/bangladesh/
●災害対策セミナー(9月13日・ダッカ)

9月13日(火)午後3時より、「バングラデシュの包括的災害対策プラン」と 題したセミナーが日本留学生同窓会(JUAAB)とCIRDAPとの共催で行われま す。

主賓のユスフ食料・災害対策大臣を始め、堀口大使、海田京都大学名誉教授が 出席し、国際連合地域開発センター(日本)で災害対策を専門としていた JUAAB顧問のカーン博士が基調講演を行う予定です。

お問い合わせは大使館広報文化班またはJUAABまで。
(JUAAB)
電話:9142792
E-mail: info@juaab.org http://www.juaab.org
●第7回年次盆栽展(9月15〜18日・ダッカ)

9月15日(木)から18日(土)までの3日間、バングラデシュ盆栽協会主催
「第7回年次盆栽展」がWomen Voluntary Associationで行われます。

15日11時からは開会式が行われ、堀口大使他が出席する予定です。

[これまで]

●保健プログラムへの支援(9月4日・ダッカ)

9月4日、日本政府は保健・人口研究センター(ICDDR,B)が行っている「貧 民の保健改善:保険・栄養・人口研究プロジェクト」に対し、4億6千万タカ (約7百万米ドル)の支援を行うことを発表しました。

また、日本政府は家族計画及び母子保健への分散型・地域参加型の取組みを促 進するローカル・イニシアティブ・プログラム(LIP)のために7千7百万タ カ(約110万米ドル)の支援を行うことも発表しました。

これらの資金は日本の債務救済無償及び食糧支援から生じた見返り資金によっ て賄われます。見返り資金とは、資金協力によって供与された額に応じた現地 通貨を開発途上国政府が積み立て、日本政府と合意の上で自国の社会経済開発
のための計画に使用するものです。

当館発英文プレスリリースは以下のウェブサイトに掲載しています。
http://www.bd.emb-japan.go.jp/en/news/pr/pr_icddrb040905.html
●持続可能な農村開発セミナー(9月3〜5日・ダッカ)

9月3日から5日の3日間、地方農村開発技術局(LGED)とJICAの共催で、 「持続可能な農村開発に関する国際セミナー」がLGEDで行われ、LGEDとJICAの 代表による農村開発に関するプレゼンテーションが行われました。3日に行わ れた開会式には、ブイヤン地方自治・農村開発・協同組合大臣、ジア同担当国 務大臣他が出席し、宇喜多臨時代理大使は農村開発における日本の支援につい て紹介しました。
http://www.bd.emb-japan.go.jp/en/embassy/speeches/sp_dev030905.html
●「稲村の火」出版記念式典(8月30日・ダッカ)

8月30日、バングラデシュ災害準備センター(BDPC)は、津波警戒に関する日 本の昔話「稲村の火」を簡単な絵本にして出版することとし、その出版記念式 典をダッカ・レポーターズ・ユニティで開催しました。ユスフ食料・災害対策 大臣他が出席し、宇喜多臨時代理大使は、日本の災害対策について紹介しまし
た。
http://www.bd.emb-japan.go.jp/en/embassy/speeches/sp_inamura300805.html

この絵本は、日本アジア災害削減センター(ADRC)、マレーシア・アジア災害 削減反応ネットワーク(ADRRN)及びBDPCにより、日本の資金援助の下で作成 されました。

内容は、1854年に西日本の村で、ある村人が津波から村を救ったという話で、
事実に基づいています。

●ダッカ廃棄物処理活動コンテスト(8月30日・ダッカ)

8月30日、ダッカ廃棄物処理活動コンテストが行われ、コカ・ダッカ市長、宇 喜多臨時代理大使他が出席しました。

このコンテストは、地域住民間で協力し、次世代のために美しく快適な街を造 り、維持することに模範的努力をしている地域を表彰することを通じて、ダッ カ市街の美化を達成することが目的です。このような取り組みを通じて、ダッ カ市の美化と、JICA開発調査団によるクリーン・ダッカ・マスター・プランに 基づく廃棄物処理システムの拡大促進を目指しています。

JICAによるプログラムを通じて、ダッカ市役所は様々な地域活動を評価し、地 域単位の廃棄物処理活動において優秀な成果を出した地域を表彰しました。

宇喜多臨時代理大使は、ダッカ市役所とJICAの共同研究を賞賛し、日本の廃棄
物処理に関する取組みを紹介しました。
http://www.bd.emb-japan.go.jp/en/embassy/speeches/sp_solidwaste300805.html

●文部科学省奨学生渡日前オリエンテーション(8月28日・ダッカ)

文部科学省奨学生のうち10月に渡日予定の122名に対するオリエンテーション
が、8月28日BIAM講堂で行われました。

今年は、149名のバングラデシュ学生が奨学金を受けることになり、そのうち の27名が今年4月から日本での学習を始めています。奨学生は、日本で学習・ 研究を進めることのほか、日バ学術交流や帰国後の母国への貢献、日バ友好関 係の促進なども期待されています。

(JUAABホームページ)
http://www.juaab.org

(文部科学省奨学金に関する大使館ウェブサイト)
http://www.bd.emb-japan.go.jp/en/education/scholarship.html



【3】青年海外協力隊リレー連載・第5回
「アジアの哀愁漂うバングラ乗物―リキシャ―その行方」
(平成16年度1次隊・ハンドボール担当 我如古盛修)

「何だとこの野郎!!外国人だからってふっかけてるのかー!?」と今日も朝 から協力隊員が啖呵をきるのは、バングラ庶民の足である、リキシャワラ(リ キシャのオジサン)にである。この前は、「暑い中、汗かいて運んでやったか らもっとおくれ」といったリキシャワラに対して「それなら、汗かかない冬は
少なく払ってもいいんだなーー!!」
とヤクザ並の論法で言い負かしていた者もいた・・・。

かく言う私は、どちらかと言うと平和主義者なので、毎回毎回のこの言い争い を好まず、2〜3tkくらいなら多めにあげてもいいかな、なんて思っている非 国民なのである。確かに現地のレートや、対外国人の運賃をさらに上げてしま うのは良くないが、彼らのあくせく働く姿をみたり、生活の事を考えたりして しまうと、どうしても甘くなってしまうのは私だけであろうか・・・。たった これだけの稼ぎで生きていけるのか?彼らの月の給料は?一日でどれくらい走 る?そもそもこのリキシャ一体どこから来て、渋滞の根源と言われる中、これ から先どうなる?そういった疑問を持つのも私だけではないだろう。

そこで、興味の範囲で関係者・リキシャワラにインタビューをして調べてみ た。アジアの至る所で見られるこのリキシャであるが、手押し・座椅子式・板 を敷いただけの「バン」など、色々な種類がある。バングラデシュの一般的な リキシャは二人乗りくらいの座椅子が後ろに取り付けてある自転車式の物を指 す。これはどう考えても椅子は二人分の大きさしかないのだが、現地の人は4 人でも5人でも乗れてしまう。あの狭い空間にセコく5人もの人間を詰め込め る彼らに混沌のアジアンパワーを感じるが、300キロ近い重さを物ともせ ず、千切れそうな足に目一杯の力を込めてこいで行くリキシャワラのパワーに は更に感嘆したものだ。

そもそも、彼らの食べている物といったら朝はビスケットとチャ(ミルク ティー)、昼は30TK前後の安いトルカリ(カレーの様なもの)もしくはバナナ とチャ、そして夜は家でこれまた安いトルカリ。というのが普通である。一体 どんなエネルギー交換をすればたったコレだけの食事で、あそこまでの重労働 が出来るのか?彼らが日本製のエコロジーカーだとすれば、自分は何十年も前 のガソリンを無駄に食うアメ車の様に見えてきてならない・・・。

とまあそんな拷問のようにも見える2キロ20分の道のりを経て、彼が手にした お金はたったの20tk。日本円にして40円というジュース一本も買えないもの だった・・・。こんな儲けで一体月にいくらの稼ぎとなるのか?ダッカのリキ シャワラの1日の稼ぎが大体200tk〜300tkだというから、毎日働いたと単純計 算して6000tk〜9000tkという事になる。地方の村では4000tk〜6000tkといった ところだ。

自分のリキシャをもっていない者は、その稼ぎの中から借り賃を払わねばなら ず、12時間につきダッカ50tk、地方の村で大体30tkと言ったところだ。それら をさし引いてもダッカのリキシャワラは月に4500tk〜7500tkも稼いでいる事に なる。バングラデシュの教師の給料が月に3000tk〜6000tk(もちろん経験や仕 事内容によって違うが)であるから、「なんだ、結構儲けているんじゃない か。同情して損した。」なんて思ってしまう人もいるだろう。しかし、それは 勘違いだ。これは休みなしに毎日12時間働いた計算で、更にリキシャが壊れた りした時の修理費も全て自腹である。

つまり、彼らから言わせてもらえば、働いても働かなくても給料を貰える生活 の安定した教師とは違って、彼らはその日休んでしまえば、その次の日は家族 が食えなくなる厳しい状況なのである。彼らの生活は苦悩と不確かさに満ちて いる。毎日働いてもなんともない体力のある若いときはいいが、歳を取った り、病気持ちになったりしてしまったリキシャワラは、それと同時に職と生活 を失う事になるのだ。実際雨季の中無理して仕事をし、風邪をこじらせ、肺炎 などを引き起こして亡くなってしまう者も多いと聞いた。

身分の低いリキシャはバングラ交通社会でも散々な扱いだ。バスとトラックの 間に挟まれて、湿気た煎餅みたいになった可哀相なリキシャを私は何度か見た 事がある。相手側にどんなに非があっても、危険な目に遭おうが、事故が起こ ろうが全て悪いのはリキシャであって、泣き寝入りするしかないという場面も 何度も見てきた。大事な商売道具をペシャンコにされた上に、それを直すのも 自分の金である。しかも一台約7000tk・・・。それこそ月の稼ぎが全て消えて しまうのだ。だから、自分の存在もそのエリアから消してしまうリキシャワラ もいるが・・。そんなさながら勝てば天国負ければ地獄といったプロボクサー の様に、ハングリーで、シビアな生活をしている彼らに対して、運賃を1〜2 tkケチって喧嘩した後に、中華料理店に入る傲慢さが私には持てないのだ・・ ・。

さて、年々増える一方で、全バングラに100万とも120万台とも言われているこ のリキシャであるが、今後将来一体どうなっていくのか。専門家ではないの で、偏見と思い込みで述べさせてもらうが、私が思うに見通しは明るくはな い。お隣の先進国の仲間入りをしたインドでは、乗用車の普及により、リキ シャとの共存が難しくなり、渋滞の原因となる、危険であるとのことでカル カッタ以外の都市ではすでに法により禁止されている。

カルカッタもその流れを受けて、最近リキシャ免許の発行を中止した。つまり 今のリキシャワラが全て引退してしまうと、リキシャはインド全土から姿を消 すことになる。すでにリキシャワラは高齢の方が多く、消えるまで十年ほどだ ろうと言われている。

それに右習えではないが、同じようにバングラデシュでもリキシャ廃止の流れ は着実に来ていると思われる。1985年に作られた政府の300ある交通プロジェ クトの中で、リキシャはたったの1文で切り捨てられていた。「ペダル・リキ シャ、手押し・手引き荷車などのような低速車両は、自動車両の発展に伴っ て、その運転技術の訓練を施すことにより徐々に撤廃されるべきである。」

上記にも少し触れたが、リキシャワラの身分は相当に低い。外国人である私か らすれば、アジアのニオイがするリキシャの伝統的な活動は、それだけでバン グラデシュを感じるのに十分な観光資源なのだが、地元の人にとってはそうは いかない。慢性的な渋滞や、度重なる事故に遭遇すると、大抵敵意はリキシャ に対して向けられる。多くの人々は、リキシャを低開発の象徴であるという理 由で嫌っている。

「それは国のイメージを汚している」と新聞へ投書した者もいる。「リキシャ はダッカの離れ業的な都市開発への奮闘ぶりを際立たせている」と新聞の社説 は書いている。「リキシャが無ければ、この国も日本みたいに綺麗な交通社会 が出来るよ」と私の生徒が言う。「無認可リキシャの絶えざる増加のおかげ で、ダッカ市は世界一遅い都市である」と地方自治体の大臣が言っている。や はり政府としては、リキシャ撤廃の意向は変わらないものだと思われる。

しかし、それはいささか無理な話である。リキシャはバングラデシュ最大の雇 用源のひとつである。現在、200万人以上の人々がそこに職を見いだしている といわれる。大多数はリキシャワラであるが、他にもミストリー(修理職 人)、所有者、製造業者、自転車部品の販売業者、茶店の所有者など様々なも のがある。これらの人数を推定することは、リキシャの台数の推定よりも難し いが、圧倒的に手織り産業や、近代工業全体よりも全国的に大多数なものと なっている。

雇用されている男子1人当たり最低3人の扶養家族がいるとみなせば、全国で 約600万人、総人口の約4.5%がリキシャに直接依存していることになる。これ ほど重要な産業部門が政府によって無視されて良いはずはないのだが・・・。 リキシャの撤廃について話しても現実的ではない。私たちが生きている間、リ キシャはずっと我々の生活と共にあるのだから、我々はリキシャと共存する方 法を学び、そして最大限に利用すべきだと私は考える。

ダッカにさえ、リキシャに未来があることを示す理由がいくつもある。第一 に、タクシーやオートリキシャのような原動機を持った競争相手よりも、リキ シャはずっと安い。第二に、ある状況ではバスやテンプー(乗り合いのミニバ ス)よりも効率がよくなる。旅客や貨物の需要がいくつもの場所に離ればなれ に散らばっているとき、一台のバスやテンプーよりもリキシャの一団のほうが 経済的にそれらを運ぶことができる。

第三に、バングラデシュの全ての都市や街では移動に対する需要が急速に増大 しているため、バス(あるいはテンプー)のサービスはほとんど需要に追いつ くことが出来ない。 新しいバスが導入されるのと同じ速さで需要が伸びて、 いつまでたってもバスは超満員のままである。定員40名のバスに軽く80名は乗 せているバスをあなたも見た事があるであろう。この状況において、リキシャ は輸送のすき間を埋める助けになり、特に女性、子供、荷物を持った人などに とっては絶対に欠くことの出来ないものである。

第四に、自動車交通は、交通ストライキ、石油危機や洪水によって中断される 危険を常に持ちあわせている。たとえば去年(2004年)の大洪水のとき、ダッ カのほとんどの道路では、そこを通ることのできた車両はリキシャだけであっ た。したがって、多様性のある交通システムは公共の安全確保のために不可欠 のものであり、リキシャは戦略的な理由により残しておくべきなのである。

もしリキシャを撤廃したいと思っても、それが成功する見込みはない。インド やインドネシアなどの諸外国では、最も活発な撲滅運動によってさえもリキ シャを完全に駆逐することはできなかった。たとえばジャカルタでは、約5万 台のリキシャが没収され、海に投げ込まれた。しかし「撲滅運動」が開始され て20年たった後も、リキシャは何千となくジャカルタ郊外を走り回っている。

バングラデシュでは、仮にリキシャがダッカから消えることになったとしても (そうなるとは思わないが)、ダッカの外に何十万台ものリキシャが依然とし て存在しているだろうし、現にリキシャの台数は増え続けている。我々は、リ キシャには未来があるということを受け入れ、そのための計画を立てるべきな のである。それでもきっと、政府はいつの日か、彼らの生活の糧を奪おうとす るだろう。

ベンガル語に「インシャンラー」という言葉がある。正確に言えばムスリムの 使う、アラビア語であるが、「神の思し召しのままに」という風に日本語に訳 される、イスラム社会で生活した人なら馴染みのある、言葉である。「また会 いましょう、インシャンラー」「今日の試合に勝つぞー。インシャンラー」 「きっと試験には受かるさ、インシャンラー」なんていう風に使う、なんでも 神の意思によって決まっているという、日本人からすると、いい加減で無責任 な言い方であるように聞こえてしまう言葉である。

まあ宗教的な観念はさて置き、私は今回、リキシャワラたちにインタビューを していてこの「インシャンラー」と言う言葉を何度と無く聞いた。それは、今 まで聞いていた「神の思し召しのままに」という意味のものではなく、政府や 権力によって、様々な理不尽や、不条理を押し付けられ、それを耐えてきた彼 らの嘆きと諦めの念を込めて放った 「しょうがない、なるようになるさ・・ ・。」という意味に聞こえた。

いつの日か、無情にもリキシャ撤廃の法律が公布されたとき、彼らはまたこう いうのだろう。「明日は明日でなんとかなるさ、インシャンラー」と今日も雨 の中を走り続ける、リキシャワラの日に焼けた首筋から、アジアの哀愁が漂っ
てくる・・・。

(青年海外協力隊)
http://www.jica.go.jp/activities/jocv/


【4】編集後記

今回は明日からの日本トレードフェア2005のため、通常より1日早い発行とな りました。トレードフェアにおける大使館ブースはバングラデシュ人向けでは ありますが、生け花・盆栽展、柔道・剣道・空手デモンストレーションなどの 文化行事もありますので、是非一度足をお運びください。 (在バングラデシュ日本国大使館広報文化班 飴谷貴信)

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