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日本・バングラデシュ交流メールマガジン(第28号・2005/3/10)
-日本とバングラデシュの橋渡しのために-
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□ 目次 □
【1】堀口大使メッセージ「特殊部隊の人権侵害と警察改革支援」
【2】最近の日本・バングラデシュ関係
[これから]
●農業セクター基礎調査ワークショップ(3月13日・ダッカ)
●文部科学省留学生渡日前オリエンテーション(3月15日・ダッカ)
●教育セクター勉強会(3月17日・ダッカ)
●ABKD・大使館共催生け花コンテスト(3月18日・ダッカ)
●日本語スピーチコンテスト(3月19日・ダッカ)
●「農村開発における地域性」研究会(3月28日・京都)
●ダッカバシ主催バングラデシュと日本の凧展(3月28/29日・ダッカ)
●マイメンシン日本留学フェア(3月29日・マイメンシン) [これまで]
●カグラチャリ日本映画祭(3月6日・カグラチャリ)
●チッタゴン生け花コンテスト他文化行事(3月4日・チッタゴン)
●中村盆栽専門家のバングラデシュ訪問(2月26日-3月2日・ダッカ)
[おしらせ]
●渡航情報(スポット情報:外国人に対するテロの脅威)の発出(3月4日)
●邦人安全情報・ハルタル情報(3月27日・全土)
●バングラデシュに関する同人誌「遡河」第15号の発刊
【3】特別寄稿「僕と真史とバングラデシュ」
(ダッカ日本人学校教諭 鈴木博)
【4】バングラデシュ案内・第21回「バングラデシュのフィラリア」
【5】編集後記
【1】 堀口大使メッセージ「特殊部隊の人権侵害と警察改革支援」
バングラデシュの治安悪化は憂慮されるレベルに達していましたが、昨年6月
からの緊急行動部隊(RAB)という軍及び警察からなる特殊部隊が犯罪取り締
まりに乗り出してから目に見えて改善し、大多数の国民はこの改善を歓迎して
います。
しかし、この特殊部隊による犯人逮捕の過程で「交戦中の射殺」のケースがか
なり多く、このため一部から特殊部隊による法手続きによらない処刑が人権無
視であるとの非難と批判が行われています。
特殊部隊による「交戦中の射殺」が多い背景としては、警察や裁判制度が十分
機能していないことが挙げられています。警察については、警察官が様々の理
由で犯人を見逃したり、捜査能力が低く自白に基づく立件が多いため、裁判で
は証拠不十分として無罪になったりするケースが少なくありません。また、裁
判についても、政治的圧力で正しい裁判が行われなかったり、さらには裁判官
が買収されて適正な判決が下されないなどの状況もあります。
このような警察や裁判制度の機能不全から、犯罪を犯しても捕まらない、罰せ
られないという風潮が強くなり、治安の悪化に拍車をかけていました。こうし
た事態に対処するため、緊急避難的に特殊部隊による超法規的な犯罪取り締ま
りを導入したのだというのが政府の立場だと思われます。
上記のような特殊部隊の人権侵害に対し、私たちが如何なる立場をとるかは非 常に悩ましいものがあります。法治国家として、特殊部隊によるこのような処 罰を直ちにやめるべきであるというのが、最もオーソドックスな立場かと思い ます。但し、この場合上記の事情から再び治安が悪化し、バングラデシュ人の みならず外国人も、以前のように犯罪の脅威にさらされることになります。 他方、だからといって国民の大多数が支持していることを理由に、特殊部隊に よる超法規的な処刑を正当化することも適切とは思われません。
バングラデシュの良き友人である日本としては、バングラデシュの政府と国民 がこの憂うべき事態を一日も早く改善できるよう、ともに取組むべく手をさし のべることが取りうる一つの立場と思われます。ただこの場合も、バングラデ シュ側がその気にならない限り、私たちがいくら躍起になっても選択肢にはな り難いものがあります。
ところが最近になって、バングラデシュ政府から、警察改革のための具体的な 協力要請が提出されました。昨年12月、日・英・「バ」三者の間でガバナンス 改善協力を行っていくことが合意されましたが、この合意を踏まえつつ警察と いう重要なセクターにおける改善のため、何とか有意義な支援を行えたらと考 えています。
【2】最近の日本・バングラデシュ関係
[これから]
●農業セクター基礎調査ワークショップ(3月13日・ダッカ)
3月13日(日)午前10時からレイクショア・ホテルにて、農業セクターの関係 者(バングラデシュ政府、ドナー、NGO等)の参加のもと、農業作物の多様化 ・付加価値化支援に関するJICA基礎調査の最終報告書案に関するワークショッ プが開催されます。当日はサイード・アタウル・ラーマン農業省次官補、JICA 新井所長、堀口大使が出席します。
●文部科学省留学生渡日前オリエンテーション(3月15日・ダッカ)
3月15日(火)午前10時30分から大使館にて、2005年度文部科学省奨学生とし て認定された研究留学生14名、学部生3名、高等専門学校生4名、専修学校生 4名、計25名の日本出発前壮行式が行われます。
●教育セクター勉強会(3月17日・ダッカ)
3月17日(木)午後5時30分から大使館3階会議室にて、初等教育及び中等教 育における課題・協力の可能性に関する教育セクター勉強会が開催されます。 今回は、帰国を控えた工藤昭征青年海外協力隊員が初等教員訓練機関配属隊員 の可能性(3分間ドリル活動、実験集、自己評価カードの取組みなど)に関 し、同じく林誠隊員が中等教育における教員訓練の問題について発表を行いま すので是非ご参加下さい。また、勉強会後には懇親会も予定されています。
●ABKD・大使館共催生け花コンテスト(3月18日・ダッカ)
3月18日(金)午後2時から5時まで、グルシャン1地区のSpectra Convention Center1階ホールにて、ABKD・大使館共催の生け花コンテストが 実施されます。コンテストに参加を希望される方は、同日午前11時30分-1時 30分までの間にご登録頂き、作品の制作・展示をお願いします。参加者が30名 になった時点で登録を打ち切りとさせて頂きます。お問い合せは大使館広報文 化班(進藤・飴谷)まで。(電話:881-0087、内線:150/151)
●日本語スピーチコンテスト(3月19日・ダッカ)
3月19日(土)午後3時から、BRACセンター内講堂にて、ダッカ大学現代語学 研究所日本語コースの協力のもと、ダッカ日本語教室同窓会の主催で日本語ス ピーチコンテストが開催されます。両校及びダッカ市内の広島アカデミーか ら、学生約15名が参加する予定です。お問い合せは大使館広報文化班(進藤・ 飴谷)まで。(電話:881-0087、内線:150/151)
●「農村開発における地域性」研究会(3月28日・京都)
3月28日(月)午後1時30分から、京都大学東南アジア研究所東棟2階教室に て、「農村開発における地域性-生活・暮らしの基層-:チッタゴン丘陵の問 題とアッサムへのベンガルモスリム移民」と題する研究会が開催されます。 チッタゴン丘陵地帯の少数民族への支援活動を行なうNPOジュマネット代表・ 下澤嶽氏による、1997年の平和協定後にチッタゴン丘陵地帯の少数民族が抱え る今日的問題の現状に関する発表、東京外国語大非常勤講師佐藤宏氏のアッサ ム州ブラマプトラ川氾濫原へのベンガルモスリム移民の問題に関する発表に引 き続き、ベンガル人と少数民族の問題について議論が行われます。
問い合わせ:京都大学 東南アジア研究センター 安藤和雄助教授
ando@cseas.kyoto-u.ac.jp Tel:075-753-7334
●ダッカバシ主催バングラデシュと日本の凧展(3月28/29日・ダッカ)
3月28日(月)午後2時30分より国立博物館Novera Hallにて、ダッカバシ主 催・大使館の協賛で、バングラデシュと日本の凧・伝統手工芸品の展示会開会 式が開催されます。開会式ではチョードリー民営化委員長が司会を務め、堀口 大使他が参加します。展示は28・29日両日行われますので、皆様お誘い合わせ の上ご来場下さい。お問い合せは大使館広報文化班(進藤・飴谷)まで。(電
話:881-0087、内線:150/151)
●マイメンシン日本留学フェア(3月29日・マイメンシン)
3月29日(火)、午前11時から、マイメンシン市にあるバングラデシュ農業大 学(BAU)講堂にて、学生、教職員、日本語学習者等広く一般を対象に、文部 科学省奨学金等による日本への留学に関する説明会を実施します。アミルル・ イスラムBAU学長及びバングラデシュ日本留学同窓生協会(JUAAB)関係者も参 加します。また、午後2時30分から、日本映画祭を実施します。お問い合せは 大使館広報文化班(進藤・飴谷)まで。(電話:881-0087、内線:150/151)
[これまで]
●カグラチョリ日本映画祭(3月6日・カグラチョリ)
3月6日、チッタゴン丘陵地帯のカグラチョリ市内ポルジョトン・ホテルに て、チッタゴン日本アカデミー・大使館共催で日本映画祭を実施し、「火垂る の墓」「子象物語」を上映しました。
●チッタゴン生け花コンテスト他文化行事(3月4日・チッタゴン)
3月4日、チッタゴン市内セントマーチン・ホテルにて、チッタゴン生け花ソ サエティ主催生け花コンテスト、チッタゴンのヌルル・イスラム名誉総領事が 主宰する日本アカデミー主催日本語スピーチコンテスト、及び当国の著名なバ ウル歌手、フォリダ・パルビン女史を招いてのレセプションが開催されまし た。
●中村盆栽専門家のバングラデシュ訪問(2月26日-3月2日・ダッカ)
2月26日から3月2日まで、(財)日本盆栽協会の中村享専門家が日本文化・ 盆栽の普及活動のため、国際交流基金より派遣されました。 中村専門家はダッカ・セグンバギチャのシルポコラ・アカデミー内国立音楽・ 舞踊センターにて、27日に盆栽ワークショップ、28日にバングラデシュ盆栽協 会会員による盆栽展開会式に引き続き、盆栽レクチャー・デモンストレーショ ンを行いました。開会式にはホック・バングラデシュ国立博物館館長他が参加
し、宇喜多公使は以下のスピーチを行いました。
http://www.bd.emb-japan.go.jp/en/embassy/speeches/bonsaiopening280205.html
3月1日の盆栽展閉会式・盆栽コンペティションの表彰式にはモイン・カーン
科学・情報・通信技術相他が参加し、堀口大使は以下のスピーチを行いまし
た。
http://www.bd.emb-japan.go.jp/en/embassy/speeches/bonsaiclosing010305.html
[おしらせ]
●渡航情報(スポット情報)の発出(3月4日)
外務省は3月4日、バングラデシュにおける外国人に対するテロの脅威に関す るスポット情報を発出しました。
1.2日付の当地報道で、イスラム原理主義組織ジャグロト・ムスリム・ジョ ノタ・バングラデシュ(JMJB:非合法のイスラム原理主義組織、北西部を中心 に活動)が現地報道機関に書簡を送付し、2月23日に逮捕された同団体指導者 他メンバーの早期釈放の要求が受け入れられなければ、ラジシャヒ周辺の北西 部を訪れる外国人や「イスラムの敵」を殺害し、治安当局を攻撃する等示唆し ました。同書簡の信憑性等は明らかではありません。
2.バングラデシュ北西部には世界遺産にも指定されているパハルプール仏 教遺跡等がありますが、イスラム原理主義組織の活動が活発化している可能性 がありますので、ラジシャヒ地方及び上記遺跡等を含む同北西部への渡航には 十分な注意が必要です。
3.バングラデシュに渡航・滞在される方は、テロ事件や不測の事態に巻き込 まれることのないよう、最新の治安関連情報の入手に努め、政治集会、宗教関 連施設、映画館、バスターミナル、市場等テロの標的となる可能性のある場所 には近づかない、多数の人が集まる場所では警戒する、周囲の状況に気をつけ るなど安全確保に十分注意を払って下さい。
http://www.pubanzen.mofa.go.jp/info/info4.asp?id=12#header
●邦人安全情報・ハルタル情報(3月27日・全土)
1.当地報道によれば、アワミ連盟を中心とする野党は、治安秩序の悪化及び 物価高騰等に抗議して、以下の反政府運動を実施することを発表しました。
(1)3月13日(日)午後4-5時
ダッカ市他の都市及び全国各県にて「人間の壁」
(2)3月16日(水)
ダッカ市で左派11党連合のハンガーストライキ及び全国でのデモ
(3)3月17日(木)
アワミ連盟による故ムジブル・ラーマン大統領の誕生日行事
(4)3月20日(日)全国各郡でのアワミ連盟他野党による「人間の壁」
(5)3月23日(水)全土でアワミ連盟他野党による集会及びデモ行進
(6)3月26日(土)アワミ連盟他野党による独立記念日への行事
(7)3月27日(日)午前6時-午後6時 全土でアワミ連盟によるハルタル
また、4月初旬に計画されている労働組合連合組織(SKOP)による労働者スト
ライキ等への支持を発表しました。
2.上記の反政府運動当日は、群衆が集まる可能性のある場所に近寄ること
は避け、やむを得ず外出する際には自己防衛手段を念頭に置くなど、慎重な行
動を取って下さい。また今後の動向に十分な注意を払って下さい。
http://www.bd.emb-japan.go.jp/jp/safety/hortalzouhou.html
●バングラデシュに関する同人誌「遡河」第15号の発刊
バングラデシュの人々の暮らし、文化、社会の動きなどを紹介する同人誌「遡 河」(そか)の15号が発刊されました。今回のテーマは独立戦争です。特集 では、家族とともに最後までバングラデシュにとどまり、独立の行方を見守っ た2人の日本人女性の貴重な記録を掲載しています。 『遡河』のバックナンバーの目次はインターネットでも公開されています。 『遡河』の購読のお申し込みやバックナンバー等に関しては下記のウェブサイ トをご参照下さい。定期購読者も募集しています。
http://www5a.biglobe.ne.jp/~folk/Soka-bak.htm
[15号の目次] 特集 独立戦争のオーラル・ヒストリー 巻頭グラビア 独立戦争のポスター/バングラデシュの独立を伝える「ステーツマン」誌ビッ シャスさんと解放戦争のオーラル・ヒストリー 佐藤宏 独立戦争・私の追憶 アベディン律子 バングラデシュ独立戦争の体験記 フセイン営子 村人たちの独立戦争 臼田雅之 残留パキスタン人-バングラデシュ独立の一側面 中谷哲弥 パキスタンからみた「バングラデシュの独立」 近藤高史 独立宣言をめぐる謎 外川昌彦 シャヒド・カドリ詩選 丹羽京子訳 福岡アジア美術館のコレクションでみるバングラデシュ現代美術 五十嵐理奈 知の伝達-翻訳文と中世ベンガルのイスラーム写本 榊和良 バングラデシュの「援助業界」 白幡利雄 「ビーン氏誕生秘話」子どもユーモア小説「ミスター・ビーン」より シャマド・クッドゥス 作 前村恵訳 「Fashion for Development」-ビビ・ラッセルの戦い 矢嶋ルツ バングラデシュのカトリック(2)-アラカンとの関わり 鈴木喜久子 バングラデシュ印象記 高田峰夫 ビルマにチャクマ人をたずねて 藤原敬介 ベンガルの季節の巡り(3) 外川昌彦 ベンガル語研修に参加して 山中広記・今岡義明 書評「ダッカへ帰る日」(駒村吉重著) 平山雄一
【3】特別寄稿「僕と真史とバングラデシュ」
(ダッカ日本人学校教諭 鈴木博) ダッカへの赴任が決まり、その地名に聞き覚えがなく、調べることにした。少 ない文献の中から出てくる言葉は「洪水」や「疫病」。生活環境がよくないこ とを知ったが、不安よりもまだ見ぬ世界への憧れの方が強かった。 家についた私を待っていたのは,風呂場を占拠したコウモリと,壁をはい回る ヤモリだった。「向こうではトカゲを食べるんだぞ」とおどされて来たが、本 当に食べるのかも・・・と思ってしまった。
学校から1歩出るとそこはもう別世界。トタンで囲まれただけの小さな家が、 所狭しと建ち並ぶ。泥水で身体を洗い、それは生活用水でもある。生ゴミの臭 いとカラスの大群。けたたましいクラクションの音。リキシャや車の混雑は日 本の比ではない。やせ細った子どもを抱き、髪の乱れた母親が、金をくれと車 の窓をたたく。排気ガスで汚れた空気は、空が青いことを忘れさせる。
あれから3年。当初の刺激は次第に薄れ、この国の現状にも慣れつつある自分 が怖い。しかしまだまだ不満は多く、日々の生活においてかなり神経をすり減 らしてしまったことは否定できない。そんな中で私が無事に任期を全うできる のも、日本にいては出会う機会さえなかった多くの方と知り合うことができ、 助けて頂いたからである。ここまで私を支えてくださった方々に、心より感謝 いたします。
さて、日本にいては経験することができなかったことがある。その1つは、 たった1人きりのクラスである。今年1年間、私は真史君と1対1の生活をし てきた。そしてこの夏は、私たちにとって忘れられない貴重な経験をした。
我が校では総合的な学習として3つの大単元に取り組んでいる。現地の学校や フレンチスクールとの交流会である「世界の友達と仲良くなろう」。バングラ デシュの文化や伝統に触れる「バングラを知ろう」。学級単位でバングラデ シュや働く人について、自由にテーマを設定して学ぶ「マイ・プロジェク ト」。
「バングラを知ろう」では少しだけベンガル語を学んだ。簡単なあいさつや自 己紹介の仕方、物の名前などである。そして、普段は身近にいるにもかかわら ず、あまり話したことがなかったベンガル人スタッフ達と交流し、彼らの住ま いや好きな食べ物などを知ることで、親近感を持つことができた。 そこでの経験を生かし、現地校であるバリダラ・インターナショナルスクール との2回の交流では、英語とベンガル語を混ぜながら、子ども達同士でかなり 会話を楽しむことができるようになった。
「マイ・プロジェクト」は、毎年10月に行われる学習発表会で、その学習の成 果を発表している。「せっかく覚えたベンガル語を使い、できればもっと話し てみたい。聞きたくても聞けなかったことを聞いてみたい。」そんな真史君の 思いから、今回我が学級では、誰もが気になっているが誰も聞いたことがない という謎-「そこらへんにいる人はなぜそこらへんにいるのか?」-に取り組 んだ。この学校周辺をはじめいたるところで昼夜を問わず、人々がフラフラし ているのが不思議だったからだ。「あなたは何をしているんですか?」片言の ベンガル語を駆使し、身振り手振りで80人と話をした。
とにかく歩いた。時間を見つけては学校の裏,バリダラ、グルシャンをひたす ら歩き話をした。とてつもなく暑かった。太陽の光が背中を突き刺し、着てい たシャツは汗でぐしょぐしょになった。
調査開始時には緊張していた真史君も、次第にベンガル人たちの人柄の良さが わかり、積極的に話しかけられるようになった。周りにはいつの間にか多くの 人が集まってきて、あっという間に人だかりができる。たとえ言葉が伝わらな くても、誰かしらが通訳しようとするお節介ぶりが見られて面白かった。
靴磨きのおじさんは、1回50TKで1日に200足磨く。計算すると1日の利益 は1万TK。どうもあやしい。落花生を売りの少年は12歳。真史君は自分と同じ 年頃の子が学校にも行かずに働いていることに衝撃を受けた。ペットボトルを 集めている人たちは、それにまた水を入れて売ると言っていた。大丈夫なのだ ろうかと不安になった。
調査の結果、ほとんどの人が仕事を持っていること、大工やレンガ割りなどの 肉体労働者が多いことがわかった。(ただし、誰もが休憩中と言いフラフラし ていた。本当か?)「この国の人たちは、優しく親切で働き者である。」これ は真史君の調査後の感想である。今まで抱いていた、バングラデシュという国 や人に対してのマイナスイメージの改善につながったのは良かった。 しかし貧しいことに変わりはない。服はボロボロ、1日中働いても食べるのが やっと、洪水で家をなくしても自力で生き抜くしかない。それでもアラーを信 じて祈りを捧げる彼ら。「バングラデシュは好きか?」と尋ねると、なんと78 人が「好きだ」と答えた。理由は「自分が生まれ育った国だから当たり前だ ろ」ということだった。
[お詫び:前回2月24日発行(第27号)特別寄稿]
第27号に掲載させて頂いた特別寄稿「バングラデシュ-大きな物語の行方」 (萱野智篤 北星学園大学助教授 アジア協会バングラデシュ客員研究員) の標題が、送信の際に文字化けしてしまい、ご迷惑をお掛けしました。お詫び 申し上げます。
【4】バングラデシュ案内(第21回)「バングラデシュのフィラリア」
先日、バングラデシュ北西部のニルファマリ県、ラルモニルハット県でフィラ リア疾患対策の為に活動中のJOCV隊員の活動、及び日本の草の根・人間の安全 保障無償資金協力事業でニルファマリ県サイドプールに建設された国内唯一の フィラリア病院等を見学させてもらいました。 フィラリアには、感染者から吸血した蚊(ネッタイイエカ)に吸血されることで 感染します。その後、体内で寄生虫が繁殖し発症すると、リンパ液の流れが阻 害され、手足、陰嚢、乳房などの腫れがおこります。腫れが更に進み、血流障 害等による皮膚の硬化、真菌性その他の合併症を起こした状態が象皮病と呼ば れます。
初日に訪問したフィラリア病院では、象皮病患者に手当の方法を講習する様 子、リンパ液が溜まって陰嚢が大きく肥大した人に対する手術、術後の経過等 を見学しました。手術を待つ一人は過去15年間、病を抱えつつリキシャを漕い できたとのことでした。現在手術が有効な治療法となるのはハイドロセル(陰 嚢水腫)のみですが、この手術を受けた約80パーセントがリキシャを生業とし ていた由で、栄養状態の悪い貧しい層に顕著な病気であることが伺われまし た。
この疾患を撲滅するため、県保健衛生局が主体となり、現在2歳以上の全県民 を対象に、年に一度の集団投薬が開始されています。伊藤隊員はニルファマリ 県で、江本隊員はラルモニルハット県で各地を訪問し、集団投薬のモニタリン グ、疾患に対する理解の促進を目的とした啓蒙活動、象皮病発症者に対する洗 浄・運動指導などの活動を行っています。
伊藤隊員によれば、ニルファマリ県ではフィラリア疾患は過去に悪いことをし たから起こるなどと信じている人が多く、病気を恥ずべきものとして隠そうと する意識が高い由でした。しかし、江本隊員によれば、ラルモニルハットでは 疾患が蚊を媒介として起こることは広く知られている由で、訪れたどの場所に もニルファマリに比べるとかなり多数の患者や住民が集まったことからも、病 気に対する意識の違いが伺われました。
殆ど男性のみが集まったある地区では、女性を別の場所に集めて話を聞きまし た。男性と一緒の場所では訴えられない症状も、女性だけの環境で女性に対し てなら言えると、真剣に、口々に訴えられました。ある女性には排泄時の痛み について相談されましたが、単語が分からず他に聞きに行こうとすると、恥ず かしいからもういいわと言われてしまいました。申し訳無かったです。
県保健衛生局長によれば、投薬の意味を説明し、ほぼ全ての家庭に薬を配って も、恐れて飲まない人が多数いる由でした。北西部の7県は国内でも特に貧困 レベルの高い地域ですが、貧しく知識に乏しい農民がこれまでの経験から生き 抜く知恵として培った、簡単には物事を信じない意識の根強さも感じました。
人々に病気に対する正しい認識を持ってもらい、地域の人々が互いに協力して 集団投薬の効果を高める為にも、人々と直に接する保健衛生局のフィールド ワーカー、そしてそのフィールドワーカーと協力して啓蒙活動を行う隊員によ る草の根の活動の重要性を強く感じました。 (大使館総務・儀典班・河野秀美)
【5】編集後記
本メルマガの編集を担当させて頂きました河野です。この度大使館勤務を終え 帰国することとなり、今回が最後の編集となりました(バングラデシュ案内に ついては、引き続き数回掲載させて頂きます)。これまで皆様の暖かい励まし を受け、メルマガを通して様々なことを学ばせて頂く機会を頂きました。ここ に御礼申し上げます。(大使館総務・儀典班・河野秀美)
●本メールマガジンは、当地在留邦人の皆様及び希望者に送付しております。 本メールマガジンの配信開始・変更・中止のご希望がありましたら、編集部ま でご連絡いただければ幸いです。
●本メールマガジンに対するご意見・ご感想、日本・バングラデシュ間の各種 交流事業等今後掲載する記事・情報に関するご示唆等をお待ちしております。 また、本メールマガジンの特別寄稿を執筆頂ける方を(自薦・他薦とも)募集 しております。お気軽に編集部までご連絡いただければ幸いです。
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●編集部のメールアドレスは次の通りです(担当:河野・飴谷)。
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発行:在バングラデシュ日本国大使館
Embassy of Japan
Plot#5& 7 Dutabash Road
Baridhara, Dhaka, Bangladesh
電話(880-2)881-0087
FAX(880-2)882-6737
http://www.bd.emb-japan.go.jp/
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