| English (英語) | サイトマップ 
Top > メールマガジン > 日本語の最新号及びバックナンバー
日本語の最新号及びバックナンバー


===================================
日本・バングラデシュ交流メールマガジン (第 19 号・ 2004/10/28
? 日本とバングラデシュの橋渡しのために ?
===================================

□ 目次 □

【1】堀口大使メッセージ「国際下痢研究所と保健セクター改革」

【2】最近の日本・バングラデシュ関係

[これから]
●バングラデシュ砒素対策報告会(10月29日・東京)
●日本人会運動会(11月5日・ダッカ)
●シャプラニール「全国キャラバン2004」最終企画(11月7日・東京)
●南アジア5カ国演劇コラボレーション(11月下旬から・東京他)

[これまで]
●対バングラデシュODAに関する現地政策協議(10月27日・ダッカ)
●バングラデシュ・アパレル展(10月25〜27日・東京)
●日本人学校避難訓練(10月19日・ダッカ)
●円借款協議(10月13日・ダッカ)

[おしらせ]
●邦人安全情報(ラマダン等に伴うテロ情勢、海外版「オレオレ詐欺」)

【3】特別寄稿「村づくりのしごと」

(JICA専門家、バングラデシュ農村開発公社:海田能宏氏)


【1】堀口大使メッセージ「国際下痢研究所と保健セクター改革」

ベルリンに本部を置くトランスペアランシー・インターナショナルが、4年連 続でバングラデシュを最も腐敗した国であるとする報告を発表しました。バン グラデシュを最悪とすることには異論があり得ますが、政府の各セクターに問 題のあることは確かです。

保健セクターについても、公立病院の共通した問題点として、医師などの無断 欠勤、勤務時間中の私的診療、薬品の抜き取り、給与支払い・監査・調達時の 不正、資金の目的外使用、労働組合の妨害などが問題点として指摘されてお り、政府が改革に緊急に取り組むことが求められています。

この改革に勇気を与えてくれるのが、先般このコラムで書いたクムディニ病院 と、先日見学した国際下痢研究所(ICDDR,B/正式名称:国際保健人口研究セ ンター)です。同研究所は1960年にコレラ研究所としてダッカに設立されまし たが、1978年国際機関として再出発しました。同研究所が1960年代に開発した 経口補水塩(ORS)は、下痢の簡便な特効薬として今では世界中で使用され、年 間3百万人の命を救っているそうです。この功績に対し、2001年ビル・ゲイツ 賞(賞金百万ドル)が授与されました。

同研究所の素晴らしいところは、世界最高レベルの研究をしているだけでな く、年間12万人の患者を治療し、さらに多数の医師、医療関係者の研修を行っ ていることです。この「三位一体」の活動を通し、例えば下痢の治療方法につ いて、最も廉価で効率的な方法を開発し、全国の病院、クリニックに提供して います。また、病気が治ったあと、原因としての栄養失調を改善しない限り、 再び発病して入院することになるので、母親に、野菜を主体としつつ必要なカ ロリーを確保する持続可能な料理を教える教室に通わせた後退院させており、 この方法も地方の病院などに教えている由です。

同研究所は現在は下痢だけではなく、母子保健、家族計画、デング熱、結核な どの感染症、栄養、安全な水、HIV/AIDSなども広く取り組んでおり、さらに、 老人問題、暴力、スラム住民の保健なども取り上げ、社会科学も研究ツールと して取り入れているそうです。

サック所長はこの病院、研究所、研修所を併せた同研究所の経営成功の秘訣と して、治療方法の失敗はリカバーできるが、倫理と金銭面については失敗は許 されないので、特別に注意している、それだけです、と述べていました。もと より、同所長を始め日本人の我妻ゆき子博士など全所員の献身的な努力は当然 の前提です。

同研究所がこのような病院経営の精神、方法についても人材を養成し、全国の 病院、クリニックに提供していけば、当国の保健セクターの改革は少しずつ進 んでいくことが期待されます。


【2】最近の日本・バングラデシュ関係

[これから]

●バングラデシュ砒素対策報告会(10月29日・東京)

10月29日(金)午後7〜9時、東京・文京シビックホールにて、アジア砒素 ネットワーク(AAN)によるバングラデシュ砒素対策報告会「バングラデシュ人 スタッフが考える今後の砒素対策」が開催されます。現地ジェソール事務所長 の高橋麻子氏による報告会の後、バングラデシュ北西部に伝わる民衆芸能「ゴ ンビラ」の旋律にあわせて、砒素についてのメッセージをうたったAANオリジ ナル啓発劇のビデオが上映されます。詳細は次のウェブサイトの10月29日をご 覧下さい。
http://www.asia-arsenic.jp/modules/piCal/

バングラデシュ農村部では最も一般的な飲料水源である手押しポンプ式管井戸 から、1993年に砒素汚染が発見されましたが、未だ万全な解決策が見つかって いません。AANは、医療相談・水質分析・水供給・住民参加の4つの分野の現 地スタッフを育てながら、総合的な対策を行っています。申し込み及びお問い 合せは、AAN東京連絡所、担当・石山氏まで。
aantokyo@proof.ocn.ne.jp

●日本人会運動会(11月5日・ダッカ)

11月5日(金)朝9時より毎年恒例の「日本人学校・日本人会合同運動会」が 開催されます。綱引きや玉いれ、リレー等の競技が行われる予定です。

なお、本運動会への参加は日本人会会員・準会員ならびに法人会員の出張者・ 関係者と限られておりますので、あらかじめご了承ください。

●シャプラニール「全国キャラバン2004」最終企画(11月7日・東京)

シャプラニールでは現在、バングラデシュの人々の生活や文化を紹介し、会の 活動を日本のみなさんに伝え、海外協力への参加を呼びかける機会として、バ ングラデシュ人スタッフ2名が約1カ月間、全国をまわって講演会等を行う 「全国キャラバン2004」を行っています。
http://www.shaplaneer.org/event/caravan2004.htm

この最終企画として、11月7日(日)に早稲田大学にてパネルディスカッショ ンが行われます。ここでは、バングラデシュの村の少女を事例に、子どもとお となの関係を日本での関係とリンクさせ、お互いの暮らしから学び合う予定で す。申込み・問合せは、シャプラニール=市民による海外協力の会まで。 TEL: 03-3202-7863 E-mail: info@shaplaneer.org

アジア5カ国演劇コラボレーション(11月下旬から・東京他)

11月25日(木)〜27日(土)に東京、12月1日(水)・2日(木)に京都、 2005年1月6日(木)・7日(金)にインドのデリーにて、壮大な旅の果てに ムガル帝国を開いたバーブルの回想録をテーマに、バングラデシュ、インド、 スリランカ、ネパール、パキスタンの気鋭の演出家、俳優、ダンサー、音楽 家、映画作家が合同作品を発表します。
http://www.jpf.go.jp/j/culture_j/news/0409/09-02.html

[これまで]

●対バングラデシュODAに関する現地政策協議(10月27日・ダッカ)

10月27日、大蔵省経済関係局(ERD)において、バングラデシュ政府関係部局 と大使館・当地JICA/JBIC事務所との間で、定例(年2回)の現地政策協議が開 催されました。今回の協議では、バングラデシュ国別援助計画の改定、洪水災 害対策、債務救済無償見返り資金・債務削減相当資金の活用などについて意見 交換が行われました。冒頭、堀口大使は以下のスピーチを行いました。
http://www.bd.emb-japan.go.jp/en/embassy/speeches/41sphbiannual271004.html

●バングラデシュ・アパレル展(10月25〜27日・東京)

10月25日(月)〜27日(水)の3日間、東京のジェトロ赤坂展示場にて、バン グラデシュ縫製品産業・輸出業協会(BGMEA)、南アジア企業開発ファシリティ (SEDF)の主催、バングラデシュ大使館、ジェトロ、日本繊維輸入組合の後援 で、バングラデシュ・アパレル展が開催されました。セミナー、ファッション ショー、展示商談会等が行われました。
http://www.jtia.or.jp/osirase/bangladeshapa.htm


●日本人学校避難訓練(10月19日・ダッカ)

10月19日(火)当地の日本人学校において、不審者侵入を想定した避難訓練を行 いました。この訓練は他国の学校において発生したテロリスト立てこもり事件 等を受け、今回初めて実施されました。学校側は、既存の警備対策マニュアル を元に非常に緊張感のある訓練を行うことができ有意義であったとともに、日 ごろの訓練の重要性を改めて認識したとのことでした。

なお、今後避難訓練等を計画されている企業等につきましては、お気軽に当館
警備担当官(内線160)までご相談ください。

●円借款協議(10月13日・ダッカ)

10月13日、大蔵省経済関係局(ERD)において、円借款協議が開催されました。 今回の協議では、日本政府代表団とバングラデシュ政府関係部局との間で、今 後の円借款のあり方等について有意義な意見交換が行なわれました。堀口大使 は、協議の冒頭で以下のスピーチを行いました。
http://www.bd.emb-japan.go.jp/en/embassy/speeches/40sphloans131004.html

[おしらせ]

●邦人安全情報(ラマダン等に伴うテロ情勢、海外版「オレオレ詐欺」)

外務省は12日付でラマダン(断食月)及びイード(断食明け祭)に伴うテロ情 勢に関する広域情報を、21日付で海外版「オレオレ詐欺」の多発に関する広域 情報を発出しました。
http://www.anzen.mofa.go.jp/kaian_search/widearea.asp


【3】特別寄稿「村づくりのしごと」

JICA専門家、バングラデシュ農村開発公社:海田能宏氏)

●ウポジラ役場

皆さん、ウポジラ(郡)の役場を訪れたことがありますか。真ん中に大きな池が あり、郡長のオフィスを中心にしていろいろな部署がこの池を取り囲むように 配置されています。こういう役場はバングラデシュの独立前後に次々に建てら れてゆきました。

それまでは役場はサブディヴィジョン(今の県にほぼ同じ)にあり、ウポジラ (旧称タナ)は警察署管区という治安維持の単位でした。今はユニオン役場 (Union Parishad Complex)がどんどん建てられていて、来年中には全ユニオ ンの半分まで完成させる計画だということです。2003年9月にはグラム・ショ ルカル(名称としては村落政府)がユニオンを9つに分けたワードという単位 で結成されたこと、皆さんご承知のとおりです。

地方分権と地方自治・行政を巡っていろいろな議論が交わされていますが、地 方行政の中心が県から郡に、そして徐々にユニオンという人口3万人弱の「行 政村」に移りつつあるのは、具体的な目に見える形で確認できます。

●コミラ・モデル

ところで、郡役場ができはじめた頃、1960年代を通じてコミラ・モデル或いは コミラ・アプローチと呼ばれる農村開発運動がアクテール・ハミード・カン博 士主導の下に展開していました。これは時代を反映して、農業技術を近代化し て農村の生活を向上させることを主眼にしてはいましたが、たいへんに多面的 かつ総合的であり、政府と農村を結び合わせる仕組みについて深い洞察を提示 していました。

実は、先に述べたウポジラ役場のレイアウトそのものもコミラ・モデルを反映 していて、いろいろな部署が協力して住民へのサービス行政を行うことを形に したものでした。これは、植民地の統治行政を継承した政府としては画期的な 改革でした。

私は、BRDB(バングラデシュ農村開発公社)に勤務しています。BRDBは今でこ そマイクロ・クレジット(小額融資)に特化した機関になっていますが、独立 直後に発足した頃は総合農村開発プログラムという名称で、コミラ・モデルを 全国展開させるべく関係部署を結び付ける役目を担っていました。

私はここでこの4年間JICAが協力してきたPRDP(参加型農村開発行政支援プロ ジェクト)のフォローアップをしつつ、PRDPのウポジラ全体への展開を計画中 です。

●PRDP(参加型農村開発行政支援プロジェクト)

PRDPはユニオンレベルでのサービス行政が農村住民へ浸透してゆき、それと共 に住民の声が地方行政に届くようなシステムを「リンクモデル」という名でつ くろうとしています。

これには少し長い経緯があります。PRDPに関わってきた人たちは1986年以来、 バングラデシュ農業大学やバングラデシュ農村開発研究所やBRDBと一緒に農村 調査・研究をしてきました。JICAに「研究協力」というカテゴリーがあって、 こういう細々とした息の長い仕事を支えてくれたからです。

この中で、痛感したことは、国や県はおろか、郡やユニオンとすら村落と結ぶ 公的なチャンネルができていないということです。国民の8割が農村に住むこ の国において、これでは村づくりはおろか、国づくりもできそうにもありませ ん。

PRDPではユニオンにUCCM(ユニオン連絡協議会)というプラットフォームを作 り、そこで毎月UP(Union Parishad)と開発関連部署の普及員(ユニオンあた り20数人が配置されている)と地域のNGOとVC(村落委員会)の代表者の4者 が集うことにし、そのアレンジをUDO(ユニオン開発官)というBRDBの「新 設」吏員がする、ということにして、4年間にわたり4ユニオンで実験してき ました。これが活き活きと機能し、村びとたちは普及員の訪問を歓迎し、普及 員は喜んで村落を訪れるという関係ができてゆきました。

PRDPのもう一つの特徴は、VC(村落委員会)のつくりかたにあります。選挙に しないで、全村集会の場で村民の面前で「推薦とサポート」という伝統的な形 で選びます。すると、こうして「自然に」選ばれる人たちはグラム(自然村) の下部単位であるパラとかショマジという地縁血縁社会単位を代表する形にな ります。結果的にマタボールと呼ばれる有力者が多く選ばれるのですが、政治 色はなく、日本の町内会の役員を髣髴とさせる人たちがVC(委員会)を構成す ることになります。

こうしたVCを中心にして、村びとたちの共通の関心事を吸い上げ、PRDPはマイ クロ・インフラという形で補助事業を実施しています。共通の関心事といって もマイクロ・クレジットやIGAと呼ばれる収入向上プログラムは避けていま す。VC委員たちや一般の村びとたちの公(おおやけ)意識を刺激するには、こ ういう個人的な利得に繋がるものよりは、集落全体のトイレづくり、保健衛生 家族計画の啓蒙、小学校の修理、集落道の修築などのような公共的なプロジェ クトのほうが好ましいと思うからです。公的なチャンネルを通した農村開発は 技術普及と公共事業への補助に限る方がいいのではないかとも思うからです。

●草の根の村づくりを目指して

PRDPの「リンクモデル」は、少しオーバーですが、コミラ・モデルの総合的か つ協同的という精神を受け継ぎ、コミラ・モデルのユニオン版になろうと目指 しています。しかし、今までにないシステムをつくり、それを支える人材をつ くるのは簡単ではないようです。

この国には「公僕」がいないと言われます。たしかにそうです。しかし、普及 員たちの郷土びいきを刺激し、専門知識を尊重し訪問を歓迎する空気の中から 公僕は育ってゆくのでしょう。事実、農業技術や井戸・サニテーション、それ に保健関係の普及員の仕事ぶりが認められるにしたがって彼らが活き活きとし てきました。BRDBのUDOは公僕の魁(さきがけ)になってくれるでしょう。

一方、村落の自治は堅固です。人材もいます。その力を村の公(おおやけ)の 発展に向けられるような制度ができると、大きな指導力を発揮するでしょう。 まだ植民地的な統治と被統治の感覚が残るこの国の治政(ガバナンス)を変え るのは、草の根の人たちが溌剌(はつらつ)と働ける制度を作るということで はないでしょうか。


【お詫び】

●本メールマガジン第17号(2004年9月30日発行)上で紹介させていただきま した本のタイトルが誤っておりました。正しくは、

  「愛を運ぶ天使たち『国際エンゼル協会21年の歩み』」

です。読者並びに関係者の皆様にご迷惑をおかけいたしましたことを深くお詫 び申し上げます。

●都合により、今号より3回、「バングラデシュ案内」をお休みさせていただ きます。



●本メールマガジンは、当地在留邦人の皆様及び希望者に送付しております。 本メールマガジンの配信開始・変更・中止のご希望がありましたら、編集部ま でご連絡いただければ幸いです。
●本メールマガジンに対するご意見・ご感想、日本・バングラデシュ間の各種 交流事業等今後掲載する記事・情報に関するご示唆等をお待ちしております。 また、本メールマガジンの特別寄稿を執筆頂ける方を(自薦・他薦とも)募集 しております。お気軽に編集部までご連絡いただければ幸いです。
●バックナンバーは次のウェブサイトにてご覧になれます。
http://www.bd.emb-japan.go.jp/jp/mailMagazine/index.html
●編集部のメールアドレスは次の通りです。

mail@embjp.accesstel.net
発行:在バングラデシュ日本国大使館
Embassy of Japan
Plot#5&7 Dutabash Road
Baridhara, Dhaka, Bangladesh
電話(880-2)881-0087
FAX(880-2)882-6737
http://www.bd.emb-japan.go.jp/

Copyright© Embassy of Japan in Bangladesh, Plot No. 5 & 7, Dutabash Road, Baridhara, Dhaka-1212.  Tel: +88-02-8810087