=================================
日本・バングラデシュ交流メールマガジン (第 13 号・ 2004/08/05 )
? 日本とバングラデシュの橋渡しのために ?
=================================
□ 目次 □
【1】堀口大使メッセージ「バングラデシュ国土改造構想」
【2】最近の日本・バングラデシュ関係
[これから]
●EU ・日本の対バ特恵関税制度に関する意見交換会(8月8日・ダッカ)
● 国際エンゼル協会主催スタディツアー(8月 16 〜 23 日・ダッカ等)
[これまで]
● 青年海外協力隊による洪水被災者緊急援助(7月 29 日・シレット等)
● 川口外相発カーン外相宛て洪水お見舞いメッセージ(7月 28 日)
● 第3回バングラデシュ国際教育フェア(7月 28 〜 30 日・ダッカ)
[おしらせ]
● 領事部の移転(8月1日・ダッカ)
● 第 25 回国際協力フォトコンテストの募集(6月1日〜9月 24 日)
●2005 年度留学生支援無償の申請受付(7月 12 日 ? 9月9日)
【3】特別寄稿「砒素の村で山羊を貸す」
(アジア砒素ネットワーク・ジョソール事務所:中村純子氏)
【4】バングラデシュ案内・第9回「女性ショミティ訪問」
【1】堀口大使メッセージ「バングラデシュ国土改造構想」
今回の洪水では、バングラデシュ全土の3分の2が冠水し、その規模は 1998 年の洪水を上回るといわれています。胸まで水に浸かりながら救援物資の配給を待つ人々の長い列を新聞写真で見て、様々な思いにとらわれました。
とくに気になったのは、今回のような大きな洪水の間隔です。東パキスタン時代の 1954 年の大洪水の後、 1974 年に大洪水に見舞われていますが、この時の間隔は 20 年です。次の大洪水は 1988 年ですから、前回との間隔は 14 年です。その次が 1998 年と間隔は 10 年となり、そして今回の洪水まで間隔はわずか6年に縮まっています。
洪水の原因については、上流地域での豪雨や、ヒマラヤ山系の溶雪が、温暖化現象で増しているとの事情があります。さらに、ヒマラヤ山系から、年間 20 億トン以上の土砂がガンジスやブラフマプトラなどの大河に流れ出し、一部が川底に沈殿して河川自体が浅くなっていることなどが挙げられています。
これらのことから単純に予測しますと、実際には起こらないことを祈りますが、次の大洪水は6年以内にやって来る可能性があります。
今回の洪水対策として、バングラデシュ政府は、国際社会の援助も得ながら、被災者に対する食料、飲料水、医薬品の提供などの短期的対策に取り組みつつあります。このあと水が引けば、洪水で損壊した家屋や、道路などのインフラ、学校などの建物、工場など産業施設の修復、再建の中期的対策に取りかかることになります。
ジア首相も言っていましたが、この洪水で過去何年分もの開発の成果が失われてしまい、これを取り戻すためには、大車輪で復興に取りかからなければなりません。ただ、何年後かわかりませんが、大洪水はまたやってくるわけで、これからの復興の努力を無にしないためにも、次の洪水に備えた長期的対策にも併せ取り組む必要があります。
長期的対策としては、村ごとにシェルターとなる二階建ての学校の建築、堤防建設、河川の浚渫などがあります。シェルターを村ごとに作れば、緊急時に人命を救い、救援活動の拠点になるメリットはあります。ただし、家畜や工場の施設などは救うことはできず、洪水が引いたらまたゼロからやり直さなければなりません。
そこで、より根本的対策として、途方もない時間と費用はかかりますが、「バングラデシュ国土改造構想」はどうでしょうか。
バングラデシュ全土の、洪水になると冠水する全ての地域において、住宅地と工場地区を決め、地区ごとに頑丈なコンクリートの枠を作ります。そこに河川を浚渫して出る土砂をどんどん入れ、最初の十年で 50 センチ、次の 10 年で1メートル、その次の 10 年で 1.5 メートルと嵩(かさ)上げしていくのです。
もとよりこの土砂が固まるには、さらに年月を要します。オランダの干拓事業は一工事の期間が50年の由ですから、長い時間がかかるのは当然です。この土木工事と並行して、これから作る公共の建物や工場は、できるだけ二階建てとします。
一方、この大工事を全国一斉に始めるのは現実的でないので、地域ごとに住民の合意ができたところから始めるのです。これからやって来る大洪水のたびごとに、大きな富を救える地区とそうでない所とがはっきりします。
それを見れば、後に続く地区が次々と出てくるでしょう。これを世界が援助するのです。そして、このような国土改造、ないし国造りの大事業を実現していく過程で、強固な国民的一体感と愛国心が育つことが期待できると思うのです。
【2】最近の日本・バングラデシュ関係
[これから]
●EU ・日本の対バ特恵関税制度に関する意見交換会(8月8日・ダッカ)
8月8日(日)午後3時より CIRDAP 講堂にて、政策対話センター( Center for Policy Dialogue / CPD )主催の「バングラデシュからの新輸出品目:バングラデシュ製品の新市場を求めて」と題する意見交換会が開かれます。 EU の EBA 政策(途上国からの全輸入品(武器は除く)に無税無枠を提供する政策)及び日本のバングラデシュに対する一般特恵関税制度の影響及び潜在的重要性に関する調査報告が発表されます。
● 国際エンゼル協会主催スタディツアー(8月 16 〜 23 日・ダッカ等)
NPO 法人国際エンゼル協会は、8月 16 〜 23 日の8日間で、協会の各種プロジェクト見学、研修生との交流、ダッカ市内見学等を内容とするスタディツアーを 実施します。
http://www.angel-ngo.gr.jp/topics/2004_06_04.html
[これまで]
● 青年海外協力隊による洪水被災者緊急援助(7月 29 日・シレット等)
JICA 青年海外協力隊は、シレット及びキショルゴンジ県の県行政官及び県保健衛生事務所長に対し、洪水被災者の救援のため、経口補水塩( ORS )約 10 万5千袋、浄水剤2万錠、その他ろうそく、マッチ、ビスケットを提供するとともに、救援物資の輸送費用として6万タカを提供しました。
青年海外協力隊のウェブサイトは下記の通りです。
http://www.jica.go.jp/activities/jocv/outline/
● 川口外相発カーン外相宛て洪水お見舞いメッセージ(7月 28 日)
川口外務大臣はカーン外相に対して、洪水災害により多くの人命と財産が失われたことを深く悼む内容のメッセージを送付しました。
http://www.bd.emb-japan.go.jp/en/news/pr/20pressmofa010804.html
● 第3回バングラデシュ国際教育フェア(7月 28 〜 30 日・ダッカ)
オーストラリア、英国等の大学が参加して行われた第3回バングラデシュ国際教育フェア開会式にて、堀口大使は以下の挨拶をしました。
http://www.bd.emb-japan.go.jp/en/embassy/speeches/30sphbief280704.html
[おしらせ]
● 領事部の移転(8月1日・ダッカ)
当館領事部は、8月1日(日)より、これまでのグルシャンの別館からバリダラの本館(旧多目的ホール)に移転して、業務を開始しました。住所、電話番号等は次の通りとなります。入・退館は広報文化センター入口(英国高等弁務官事務所寄り)をご利用願います。
住所: Plot # 5&7 Dutabash Road, Baridhara, Dhaka
電話: (880-2 ) 881-0087 (大使館代表)
FAX : (880-2 ) 988-2700 (領事部専用)
電子メール: consular@embjp.accesstel.net
窓口時間:午前9時〜午後 12 時 30 分、午後1時 30 分〜午後5時
(昼休み:午後 12 時 30 分〜午後1時 30 分)
休館日:週末(金曜・土曜)及び大使館の休館日
● 第 25 回国際協力フォトコンテストの募集(6月1日〜9月 24 日)
JICA では、日本人と開発途上国の人々との技術協力や交流の現場を撮影した写真、又は開発途上国の自然や文化の中で生きる人々などを撮影した写真のフォトコンテストを実施しています。詳しくは次のウェブサイトをご覧下さい。
http://www.jica.go.jp/classroom/photocon/index.html
昨年度の入選作品は下記でご覧になれます。
http://www.jica.go.jp/classroom/photocon24/index.html
●2005 年度留学生支援無償の申請受付(7月 12 日〜9月9日)
7月 12 日より9月9日まで、 2005 年度(第4期)留学生支援無償の申請を受付けています。
http://www.jice.org/english/jds/index.html
本年7月から日本で勉強を始めた 2004 年度(第3期)留学生 20 名のリストと経歴・抱負を、次のウェブサイトに掲載しました。
http://www.jice.org/english/jds/bangladesh_org.html#08
【3】特別寄稿「砒素の村で山羊を貸す」
(アジア砒素ネットワーク・ジョソール事務所:中村純子氏)
アジア砒素ネットワーク( AAN )が活動しているジョソール県シャシャ郡に、砒素中毒患者が 150 人以上いるシャムタという村があります。この村にレザウル・モロルという青年がいます。
1996 年に村を訪れた医師により、彼は慢性砒素中毒と診断されました。 20 歳だった彼は、家族にも見放され、杖なしでは立つこともできないほど衰弱していました。それまでは、原因不明の伝染病と思われていたのです。
安全な水を飲むようになってから、彼は驚くほど回復していきました。彼が生計を立てられるようにと、ヘルスセンターの医師からバンリキシャがプレゼントされました。
彼にも新しい家族ができ、現在は奥さんと2歳になる娘と暮らしています。杖なしで立つこともできなかった彼の足が、今は彼の生活を支えているのです。
でもバンリキシャをこぐ仕事は体力を使います。長い間砒素の毒に蝕まれた彼の体はやはり万全ではなく、手足に浮腫がみられたり、時々寝込んだりしています。医者は安静が必要といいますが、リキシャをこぐ以外に彼の生活を支える術はありません。
「体の負担にならない、何か座りながらできるような仕事、例えば炒りピーナッツやムリなどの軽食を売ったり出来ないの?」と聞いてみました。すると彼は「自分は砒素中毒患者だ。こんな手で作った食べ物など誰も食べたがらないよ。」と、角化症でゴツゴツした手のひらを私に見せるのでした。慢性砒素中毒はうつる病気ではないのに・・・。
そこで、私の青年海外協力隊員時代の経験から、彼に山羊を飼うことを提案しました。数頭の雌山羊を貸して、生まれた子山羊を育てて売る。これなら労力も使わず、辺りの草を食べて育つのでお金もほとんどかかりません。
彼は、「それなら牛がほしい。」といいました。本人の希望を尊重して、1頭の子牛を貸すことにしました。まだ現金収入にはつながっていませんが、子牛は大切に育てられています。
堀口大使が開通式に参加してくださった、三日月湖を原水にした村落パイプ給水施設は、維持管理費として1世帯あたり毎月 20 タカのお金が必要になります。啓発の活動を通して村の人々の生活を見てきましたが、 300 世帯の中には、旦那さんがいなくて収入のあてがないような女性もいます。このような人々からも、毎月の使用料を集めていかなければなりません。
そこで今、毎月お金を出すのが難しい世帯に対して山羊を貸す計画をしています。生まれる子山羊を育てて得られる収入で、使用料を賄ってもらおうという計画です。
というわけで、現在山羊のドナーを募集中です。興味のある方はご一報を。
jun_nakamu@hotmail.com
【4】バングラデシュ案内・第9回「女性ショミティ訪問」
シャプラニール=市民による海外協力の会は、農村開発の手段として「ショミティ(農民達が自発的に作る生活向上のための相互扶助グループ)」を導入し、この「ショミティ」の様々な活動を支援しています。今回は、シャプラニール・ダッカ駐在員の中森さん、シャプラニールから独立したばかりの現地 NGO 「 STEP 」の事業コーディネーターのダースさん他の案内で訪れた、チョトポイラ村の女性ショミティの活動を紹介したいと思います。
今回の集会には、村の3つの女性ショミティから約 20 名が集まりました。集会は週に1度開かれ、貯金やローンの手続をするほか、生活や村の問題について話し合い、結婚の法律、育児や掃除の仕方など生活向上に必要なことを勉強します。
会員は全員自分の貯金通帳を持っています。貯金は少しでも毎週必ずするようにして(平均4〜5タカ(1タカ=約2円))、皆の預金をまとめて銀行に預け、1年ごとに利息を各会員で分配します。
貯金は多くの場合、子供の教育費、娘の結婚費用(当地には花嫁側が花婿側に持参金を提供する「ダウリー」という習慣があります)、家の修理費など主に子供・家族のために使われるそうです。
しかし、自分のアクセサリーを買うという発言もあり、自分のためにもお金を使えていると聞いて嬉しく思いました。カラフルなサリーやアクセサリーを身に纏うお洒落な彼女たちです。これは貯金で買ったのよと金(?)のイヤリングを見せてくれた女性もいました。
会員は、貯金総額の4倍までの金額を STEP から借りることもできます。ローンの使い道は種籾やリキシャ(夫の仕事のため)の購入など各世帯によって多種多様です。お金の返済期間はお金の利用目的毎に異なり、例えばビジネス目的であれば1年、じゃが芋(地域の特産品)の栽培なら3ヶ月と決まっています。
ところで、この女性ショミティでは当初誰も読み書きを知らなかったそうですが、シャプラニールの成人識字教室の結果、今では全員自分の名前や住所が書けます。集会でも参加者名や預金の総額、話合いの内容などがきちんと記録されていました。
シャプラニールでは、村人が一度おぼえた読み書きを忘れないよう、作文コンテストを開き、 2 ヶ月に1度新聞を発行し、図書館を開くなどして、村人が主体的に楽しめる工夫を凝らしています。皆は新聞を回し読みしたりして、とても楽しんでいる様子です。最近作文コンテストで優勝したリリさんはヤギをもらって、最近そのヤギが2匹の子を産んだと嬉しそうに話してくれました。
女性たちは恥ずかしがりながらもよく笑い、その表情はとても生き生きとして いました。ショミティの活動をしている彼女たちは自分で自分の生活を向上させるため努力したという確かな自信、達成感を持っているようでした。(次回は同じ村の少女ショミティの活動をご紹介したいと思います。)
シャプラニールの活動に関する情報は下記のウェブサイトでご覧になれます。
http://www.shaplaneer.org/
(大使館広報文化班・河野秀美)
● 本メールマガジンは、当地在留邦人の皆様及び希望者に送付しております。本メールマガジンの配信開始・変更・中止のご希望がありましたら、編集部までご連絡いただければ幸いです。
● 本メールマガジンに対するご意見・ご感想、今後掲載する記事・情報に関するご示唆等をお待ちしております。また、本メールマガジンの特別寄稿を執筆頂ける方を(自薦・他薦とも)募集しております。お気軽に編集部までご連絡いただければ幸いです。
● 編集部のメールアドレスは次の通りです。
mail@embjp.accesstel.net
発行:在バングラデシュ日本国大使館
Embassy of Japan
Plot#5&7 Dutabash Road
Baridhara, Dhaka, Bangladesh
電話 (880-2)881-0087
FAX(880-2)882-6737
http://www.bd.emb-japan.go.jp/
|