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日本・バングラデシュ交流メールマガジン (第 12 号・ 2004/07/23 )
? 日本とバングラデシュの橋渡しのために ?
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□ 目次 □
【1】堀口大使メッセージ「ジョソールの砒素対策プロジェクト再訪」
【2】最近の日本・バングラデシュ関係
[これから]
● 空手ジャパンカップ・トーナメント(7月 30 日・ダッカ)
● 国際エンゼル協会主催スタディツアー(8月 16 〜 23 日・ダッカ等)
[これまで]
● 「サクラファミリーホーム」開園 10 周年記念式典( 7 月 21 日・ガジプール)
● 母子保健人材開発プロジェクト最終セミナー(7月 17 日・ダッカ)
●JICA ・アジア砒素ネットワーク給水施設開設式(7月 12 日・ジョソール)
[おしらせ]
● ハルタル等(7月 24 日・バングラデシュ全土)
● 国連開発計画( UNDP )採用ミッションの訪日( 10 月4〜8日・東京)
● 第 25 回国際協力フォトコンテストの募集(6月1日〜9月 24 日)
●2005 年度留学生支援無償の申請受付(7月 12 日〜9月9日)
【3】特別寄稿「バングラデシュへ ふたたび」(詩人:白石かずこ氏)
【4】バングラデシュ案内・第8回「バングラデシュの洪水」
【1】堀口大使メッセージ「ジョソールの砒素対策プロジェクト再訪」
7月 12 日、ジョソールのシャルシャ郡で、アジア砒素ネットワーク( AAN )の皆さんが中心となって完成した、飲料水パイプライン開設式に出席しました。
ちょうど一年前にジョソールに出張したとき、 AAN の皆さんから、砒素汚染対策として表流水の利用が最も有力な解決策であること、しかし、問題は水源地の確保にあり、既存の池はみな生活用水や養殖池として使途が決まっているため、水源池の確保がなかなか難しいことなどを伺いました。
それから一年がたち、この間 AAN は、近くのハオル(三日月湖)の利用許可を地方政府から取り付け、 JICA の資金援助を得て本格的な処理施設を完成させました。同施設の能力は日産 2.5 立方メートルであり、これにより3つの村の 300 世帯、 1,500 名に1日 10 リットルずつを給水することができるそうです。
このようなプロジェクトが成功するためには、水源地、資金を確保して水処理施設を建設することだけでなく、その維持、運営が鍵となります。そのためには、住民の意識改革が極めて重要となります。
住民にオーナーシップを持たせるべく、総経費 140 万タカ(約 280 万円)の 10 %を住民負担とし(残り 90 %は JICA が拠出)、しかも建設後の管理を住民が責任をもって行う体制になっています。これらのことを実現するまでに、 AAN の皆さんが払われた努力はさぞかし大きいものであったに違いありません。
このプロジェクトでは、もう一つ特記すべき点があります。それは、本プロジェクトのために作られた PR の巧さです。「ゴンビラ」という、お爺さんと孫による掛け合い漫才の形で、本プロジェクトの意義や AAN と JICA の貢献を、村民に啓蒙するのです。たとえばこういうやり取りがあります。
(孫の歌)ハオル(三日月湖)の水には砒素や鉄がない。きれいにして飲めば一番安全だ、ナナヘー。病原菌は塩素の粉を入れればいなくなる(繰り返し)。
フィルターの石と砂が水をきれいにする。運が向いてきた。今まで知らなかった。 AAN のことを私たちは忘れない。
(中略)
(お爺さん)なら、この石と砂が汚れたらどうするんだ?
(孫の歌)汚れたら砂の上を1〜2ヶ月ごとに1 cm 削り取らないといけない、ナナヘー。砂利が汚れたら、時々洗わないといけない(繰り返し)。そうしないといい水が出ない。運が向いてきた。今まで知らなかった。 AAN のことを私たちは忘れない。
この「ゴンビラ」が終わるまで、みな熱心に観ていました。娯楽の少ない村の人々でなくても、十分楽しめる内容でした。頭のいい人がいるものだと感心するとともに、 AAN の飲料水パイプラインがこれから多くの地域に普及していくことを確信しました。
【2】最近の日本・バングラデシュ関係
[これから]
● 空手ジャパンカップ・トーナメント(洪水のため開催延期・ダッカ)
7月 30 日、シャヒード・スフラワルディ・ミルプール室内競技場にて開催を予定していた空手ジャパンカップ・トーナメント 2004 は、深刻化する洪水の影響を考慮し開催を延期することになりました。開催時期等詳細は追ってご連絡致します。
hidemi.kohno@mofa.go.jp
● 国際エンゼル協会主催スタディツアー(8月 16 〜 23 日・ダッカ等)
NPO 法人国際エンゼル協会は、8月 16 〜 23 日の8日間で、協会の各種プロジェクト見学、研修生との交流、ダッカ市内見学等を内容とするスタディツアーを実施します。
http://www.angel-ngo.gr.jp/topics/2004_06_04.html
[これまで]
● 「サクラファミリーホーム」開園 10 周年記念式典( 7 月 21 日・ガジプール)
7月 21 日、ガジプール・サウスシャルナにある孤児院「サクラファミリーホーム」の開園 10 周年記念式典が開催されました。サクラファミリーホームは、サクラファミリー運動の会・日本バングラデシュ協力基金(会長:中川恵資氏)が設立、運営している施設で、当日の式典には約 320 名が参加し、堀口大使が主賓として挨拶を行いました。
http://www.bd.emb-japan.go.jp/en/embassy/speeches/29sphsfh210704.html
● 母子保健人材開発プロジェクト最終セミナー(7月 17 日・ダッカ)
7月 17 日、保健省大臣・次官他政府関係者他 120 名の参加を得て、最終セミナーが開催されました。堀口大使は次のスピーチを行いました。
http://www.bd.emb-japan.go.jp/en/embassy/speeches/28sphhrdrh170704.html
プロジェクト概要は次の通りです。
http://www.jica.go.jp/bangladesh/activities/07.html
●JICA ・アジア砒素ネットワーク給水施設開設式(7月 12 日・ジョソール)
冒頭の堀口大使メッセージにある通り7月 12 日、 JICA 開発パートナーシップ事業として、アジア砒素ネットワーク (AAN) が砒素に汚染されていない安全な水を供給するために取り組んできたパイプ給水施設(三日月湖の水をパイプで給水するもの)の開設式が開催されました。堀口大使は次のスピーチを行いました。
http://www.bd.emb-japan.go.jp/en/embassy/speeches/27sphann120704.html
プロジェクト概要は次の通りです。
http://www.jica.go.jp/bangladesh/activities/10.html
アジア砒素ネットワークのウェブサイトでも活動が紹介されています。
http://www.asia-arsenic.net/
[おしらせ]
● ハルタル等(7月 24 日・バングラデシュ全土)
当地報道によれば、アワミ連盟は、7月 24 日(土)、日の出から日没までの間、バングラデシュ全土においてハルタルを実施することを発表しています。主な理由として、本年5月7日発生したトンギ市におけるアワミ連盟国会議員殺害事件の被疑者が逮捕後死亡したのは武装警察隊による暴行が原因であり、現政権が重要な証人の口封じを図ったものであるとの主張を掲げています。ハルタル当日は、群衆が集る地域周辺へ出かけることは避けるようにして下さい。また、テレビ、ラジオ、新聞等により、今後の動向に注意を払ってください。
● 国連開発計画( UNDP )採用ミッションの訪日( 10 月4〜8日・東京)
国連開発計画( UNDP )の採用ミッションが 10 月4〜8日に訪日する予定です。 UNDP に就職を希望される方は、この機会の応募をお勧めします。外務省国際機関人事センターへの応募用紙の提出締め切りは8月27日です。募集職種・分野、応募要件・方法等詳細は国際機関人事センターホームページ
http://www.mofa-irc.go.jp/boshu/boshu_undp.htm
及び大使館ホームページでもご覧になれます。
http://www.bd.emb-japan.go.jp/undpmission.htm
UNDP の事業内容等については下記のウェブサイトでご確認下さい。
http://www.undp.or.jp/intro.htm
● 第 25 回国際協力フォトコンテストの募集(6月1日〜9月 24 日)
JICA は日本人と開発途上国の人々との技術協力や交流の現場を撮影した写真又は開発途上国の自然や文化の中で生きる人々などを撮影した写真のフォトコンテストを実施しています。詳しくは次のウェブサイトをご覧下さい。
http://www.jica.go.jp/classroom/photocon/index.html
昨年度の入選作品は下記でご覧になれます。
http://www.jica.go.jp/classroom/photocon24/index.html
●2005 年度留学生支援無償の申請受付(7月 12 日〜9月9日)
7月 12 日より9月9日まで、 2005 年度(第4期)留学生支援無償の申請を受付けています。
http://www.jice.org/english/jds/index.html
本年7月から日本で勉強を始めた 2004 年度(第3期)留学生 20 名のリストと経歴・抱負を、次のウェブサイトに掲載しました。
http://www.jice.org/english/jds/bangladesh_org.html#08
【3】特別寄稿「バングラデシュへ ふたたび」 ( 詩人:白石かずこ氏)
(昨月わが国が誇る著名な詩人の白石かずこさんが、バングラデシュの若手詩人であるアミヌル・ラーマン氏と詩の朗読会・ベンガル語版の白石かずこ氏の詩集、日・英語版のアミヌル・ラーマン氏の詩集の出版会に出席するため当地を訪問されました。この原稿はその際に白石さんにご寄稿頂いたものです。)
17 年前の初夏この国を訪れ、更に2年後のアジア詩人祭で訪れ、今回で3度目のバングラデシュ訪問となりました。「なぜ、どーして?」と問われますが、それはバングラデシュのこの世ならぬ美しい洪水の写真に魂が吸い寄せられたからです。
1987 年2月 27 日、朝、私はぜひ詩人に会いたいという前エルシャド大統領が待つ東京のホテルを訪ねました。当時エルシャド大統領は昭和天皇の大葬のために来日していました。
この時、「私も詩人です。」というエルシャド大統領の詩集に載っていた洪水の写真のあまりの美しさに、私は目の前にいる大統領の事も忘れて見入りました。
洪水が多い時は確かに災害ですが、といって水がなければ日照りの苦しみがあります。クリスタルのように澄んだ湖のように見える畠の上で、少年たちが船に子犬や幼い少女をのせて遊ぶ風景はまさに「水の神話」のように思われました。
洪水の時には農夫たちは自分の畠に船を浮かべ昼寝し、網をかけてエビの捕れるのを待ちます。そのエビカレーの美味しさは格別です。私は画家で写真家の友人の菱沼真彦氏と 21 世紀には消えて行くだろう水の神話を撮りにバングラデシュを訪れたのです。
ところが、バングラデシュについた途端に、詩人たちが待っていてくれたのです。ここはタゴールの国、皆タゴールを敬愛し詩を歌う。農村からフェリーに乗って到着したチッタゴンでも詩人たちが私達の到着を待っていてくれました。
リキシャ引きの男まで「コビ(詩)」という言葉を誇らしげに語りました。「水の神話」を撮りに行き、この国の魂の熱さ、清さに触れました。
1989 年のバングラデシュ訪問の際には学生だったアミヌル・ラーマン氏からベンガル語で私の詩集が出版されるとメールが来ました。同時に彼も国際的に活躍する若いすばらしい詩人になっていました。私の詩の本は英独西語に訳されましたが、ベンガル語にも翻訳されるとは光栄です。
昨夕、アミヌル氏が読む詩の声が会場を不思議な宇宙にし、人々は感動に酔いました。私もまた、日本語がベンガル語になるとまるでシンフォニーを聴くようにダイナミックに心を打つのに感動しました。特別に駐バングラデシュ日本大使、この国のコビ(詩人)達が集まって詩の朗読会、本の出版会を催すことができ、すばらしいモニュメントになった今回のバングラデシュでの休日でした。
白石かずこ氏、アミヌル・ラーマン氏の詩集については、大使館広報文化班河野までお問い合せ下さい。
hidemi.kohno@mofa.go.jp
【4】バングラデシュ案内・第8回「バングラデシュの洪水」
バングラデシュは 1954 年以降、過去に6回( 55 、 63 、 74 、 87 、 88 、 98 年)国民生活に深刻な影響を及ぼす大規模な洪水に見舞われてきました。国内主要河川に設置された水位計が危険水位を越えると洪水と判断されますが、 1954 年以降最悪の洪水となった 1998 年には国土の約 68 %が水没しました。ダッカ市が最も影響を受けたのは 88 年で、当時市内の約 55 %が水没したそうです。
現在の洪水の状況もかなり深刻で、 21 日現在で全土 64 県のうちの 42 県、約1千5百万人が直接被害を受けました。ダッカ市のプロゴティ・ショロニ(ビッショロード)以東のバッダ、ランプーラ、キルガオン、ショブジバーグ等も例外ではありません。
今回は 17 日にマニクゴンジ県ギオール郡ポイラ村周辺で体験した洪水の様子をお伝えしたいと思います。このポイラ村周辺では、バングラデシュとネパールで農村開発やストリート・チルドレンの支援活動を行っている「特定非営利活動法人 シャプラニール=市民による海外協力の会」が事業を展開しています。
ポイラ村の「 STEP 」事務所( 2003 年にシャプラニールのパートナー団体として独立)にも水が迫っていました。事務所 No.2 のダースさんによれば、ジョムナ川の支流のギオール川からあふれた水で既に多くの家が浸水しており、昨夜は多くの村人が鶏や家鴨などを屋根の上に上げて、学校や比較的高い土地にある家に避難したそうです。
舟で近くの家で行われた女性ショミティの集会を見に行きましたが、集まった女性達は、これまでは自家栽培の野菜を食べることができ、余分な野菜を売って収入を得ることもできたのに、畑を失って、今や自分達が食べる野菜や家畜の餌まで買って賄わなければならないと口々に訴えていました。
ダースさんは、例年の予定範囲内で起こる「増水」であれば土地が肥え、魚が捕れるという良い面もあるが、「洪水」となると被害は深刻だと話してくれました。
村人達は毎年雨期の増水に備えて事前に食料や家畜の餌などを蓄えています。洪水になれば魚を捕り、舟の船頭となり、あるいは出稼ぎに出て過酷な環境の中でも自分たちに出来る精一杯の事をし、家族と共にたくましく生きる。浸水した木々の間に網を張り魚を捕る、バナナの幹をつないで舟にするなどの生活の知恵も随所に見られました。
行きは舟に乗りましたが、帰りは涼やかな風を受けながら夕闇の迫る農村風景を眺めつつリキシャに乗り、道が切れると舟に乗り換え(2回舟に乗りました)、村から約 10 キロのボロンガイルまで戻りました。途中道が寸断された部分があり、そこも何とかリキシャで通ることができましたが、リキシャ引きは着ているルンギの裾を短く折り込み、一生懸命自転車をこいでいました。自分の重さが申し訳なく思われました。(ポイラ村での「 STEP 」の活動等は次号で紹介させて頂きます。)
バングラデシュ洪水予想警報センターは毎日下記のウェブサイトに洪水の状況をアップデートしています。
http://www.ffwc.net/
(大使館広報文化班・河野秀美)
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