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日本・バングラデシュ交流メールマガジン (第 11 号・ 2004/07/08 )
? 日本とバングラデシュの橋渡しのために ?
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□ 目次 □
【1】堀口大使メッセージ「援助広報活動の強化」
【2】最近の日本・バングラデシュ関係
[これから]
● シェイク・アフザル氏個展(7月7〜 17 日・ダッカ)
●JICA ・アジア砒素ネットワーク給水施設開設式(7月 12 日・ジョソール)
●2005 年度留学生支援無償の申請受付開始(7月 12 日〜9月9日)
● 母子保健人材開発プロジェクト最終セミナー(7月 17 日・ダッカ)
● バングラデシュ・チャリティ・カレーパーティ(7月 17 日・東京)
● 空手ジャパンカップ・トーナメント(7月 30 日・ダッカ)
● 国際エンゼル協会主催スタディツアー(8月 16 〜 23 日・ダッカ等)
[これまで]
● 日・バングラデシュ・ハイレベル協議(6月 28 日・東京)
● バングラデシュ開発援助勉強会(援助モダリティ)(6月 23 日・ダッカ)
● 国別援助計画改訂に向けての意見交換会(6月 19 日・ダッカ)
[おしらせ]
● ハルタル等(7月 11 日・バングラデシュ全国)
● 大使館領事・当番者用緊急電話番号の変更
【3】特別寄稿「 JDS 『人材育成奨学計画』の挑戦」
( JICE 国際交流部留学生二課:中山映氏)
【4】駐バングラデシュ歴代大使の証言・第6回(第9代大使:竹中繁雄氏)
「メグナ・グムティ橋」
【5】バングラデシュ名所案内・第7回「ダッカ近郊の家庭訪問」
【1】堀口大使メッセージ「援助広報活動の強化」
バングラデシュの独立以来、わが国が官民レベルで行ってきた援助に対する当国の人々の感謝が、わが国への信頼、尊敬のベースになっていることは、以前記したとおりです。
ただ最近時折感じるのは、当国の知識人といわれる人々についても、わが国の援助に関する知識が意外に不十分なことです。この点について、バングラデシュの政府および国民がわが国の援助について全体的に高い評価をしているのであれば、必ずしも援助の詳細について知らなくても良いのではないかとの意見もあろうかと思います。
とくに、日本社会では自らの善行を吹聴しないことが美徳であり、自己宣伝を潔しとしない価値観があります。そのため他人が評価してくれるまで待つ、さらには、必ずしも他人に知られなくてもよいとの美意識すら見られます。また、語学のハンディもあってPRに対する苦手意識が加わる場合もあります。
しかし、各国が時には国内ニーズを後回しにしてまでも、貴重な税収を外国援助に当てるのは、国際社会における先進国の義務感もありますが、二国間援助の場合、被援助国との良好な関係を築くためです。そして二国間関係を良好にしていくためには、わが国が国民の税金を使って当該国を援助していること、援助によって具体的成果が挙がっていることを当該国民によく理解して貰うことが重要です。
この場合、単なるムード的な評価よりも、出来る限り正確な知識にたった評価の方が強固な友好関係の基礎になることから、出来る限り正確な事実に基づく評価の確立を目指してさらなる努力を払うべきものと思われます。
そこで当館では、経協関係業務では担当者の時間の半分位をPRに割くようなつもりで広報に力を入れています。
例えば草の根・人間の安全保障無償案件では、一案件ごとに、協定の署名時期、小切手を手渡す時期、案件の完成時期の少なくても3回は英文およびベンガル語のプレス・リリースを出し、プレスに報道して貰っています。
また、新規案件だけではなく昔の案件についても、機会を捉えて繰り返し広報するようにしています。例えば、 1992 年から 1997 年まで、当館の発意でユネスコの日本基金を使って当国の世界遺産であるパハルプールとバゲルハットを修築したことがありますが、昨年ユネスコの松浦事務局長が当地を訪問された機会を捉えてプレス・リリースを出して広報した結果、各紙に再び広く報道されたことがありました。
さらに最近、わが国の援助についてのベンガル語の広報パンフレットを2万部作成して、全国の学校への送付などを含め広く配布しつつあります。
援助広報については、対象に応じた様々なアプローチが必要です。先日、当館の紀谷参事官が当地経協関係者のメーリングリストで提案していたバングラデシュ人全般を対象とした「 ODA クイズ」等も面白いアイデアです。読者の皆さんからいろいろなアイデアを頂きながら、わが国の援助について少しでも多くのバングラデシュ人に理解を深めて貰うべく努力を重ねていきたいと考えています。
【2】最近の日本・バングラデシュ関係
[これから]
● シェイク・アフザル氏個展(7月7〜 17 日・ダッカ)
7月7〜 17 日(金曜を除く)の午前 10 時から午後8時半まで、グルシャン・セカンドマーケット2階のサジュ・アートギャラリーにて、元文部科学省奨学生シェイク・アフザル氏の個展が開催されています。アフザル氏は筑波大学で修士号を取得し、更に水墨画の手法・近代印刷技術等を学び、現在は主に日本とバングラデシュで若手芸術家として活躍しつつ、ダッカ大学芸術学部で教鞭を採っています。今回の個展では水墨画の様式を取り入れた新しい作風の絵画も展示されています。同氏の絵は日本のギャラリーのウェブサイトでも紹介されています。
http://kaiga.to/art/agtweb/work_af_index.htm
初日は約 40 名が参加してシェイク・アフザル氏の個展の開会式が行われ、堀口 大使も挨拶を行いました。
http://www.bd.emb-japan.go.jp/en/embassy/speeches/26sphafzal070704.html
●JICA ・アジア砒素ネットワーク給水施設開設式(7月 12 日・ジョソール)
JICA の開発パートナーシップ事業の一環として、アジア砒素ネットワーク (AAN) が砒素に汚染していない安全な水を供給するために取り組んできたパイプ給水施(三日月湖の水をパイプで給水するもの)の開設式が7月 12 日に開催されます。プロジェクト概要は次の通りです。
http://www.jica.go.jp/bangladesh/activities/10.html
アジア砒素ネットワークのウェブサイトでも活動が紹介されています。
http://www.asia-arsenic.net/
●2005 年度留学生支援無償の申請受付開始(7月 12 日〜9月9日)
7月 12 日より9月9日まで、 2005 年度(第4期)留学生支援無償の申請受付が行われます。(留学生支援無償については、特別寄稿をご覧ください。)募集要項等の詳細は追って JICE のウェブサイトに掲載される予定です。
http://www.jice.org/english/jds/index.html
● 母子保健人材開発プロジェクト最終セミナー(7月 17 日・ダッカ)
7月 17 日(土)午後5〜8時、ショナルガオンホテルにて、母子保健人材開発プロジェクトの最終セミナーが開催されます。このプロジェクトは、母子保健研修所( MCHTI )の臨床・研修機能の強化、住民の母子保健サービスのニーズを研修内容に反映させることのできるシステム設置などを目的として活動してきました。プロジェクト概要は次の通りです。
http://www.jica.go.jp/bangladesh/activities/07.html
● バングラデシュ・チャリティ・カレーパーティ(7月 17 日・東京)
7月 17 日(土)夜、 NGO ハンガー・フリー・ワールドが東京の市ヶ谷でチャリティ・カレー・パーティを開催します。
http://www.hungerfree.net/event.html
● 空手ジャパンカップ・トーナメント(7月 30 日・ダッカ)
7月 30 日(金)、ダッカ・ミルプール室内競技場にて空手ジャパンカップ・トーナメントが開催されます。詳細については追ってご連絡致します。
● 国際エンゼル協会主催スタディツアー(8月 16 〜 23 日・ダッカ等)
NPO 法人国際エンゼル協会は、8月 16 〜 23 日の8日間で協会の各種プロジェクト見学、研修生との交流、ダッカ市内見学等を内容とするスタディツアーを実施します。
http://www.angel-ngo.gr.jp/topics/2004_06_04.html
[これまで]
● 日・バングラデシュ・ハイレベル協議(6月 28 日・東京)
6月 28 日、日本の田中均外務審議官とバングラデシュのシャムシェル・モービン・チョードリー外務次官は日・バングラデシュ二国間関係に加え、南アジア等の地域情勢、テロ対策、イラク問題などについて幅広い意見交換を行い、戦略的観点から両国の対話を強化することが合意されました。
● バングラデシュ開発援助勉強会(援助モダリティ)(6月 23 日・ダッカ)
6月 23 日、「援助モダリティとグッド・ドナーシップ−援助モダリティ選択の基本的視点とバングラデシュの位置づけ−」をテーマに、政策研究大学院大学の大野泉教授他を招いて勉強会を開催しました。
http://www.bd.emb-japan.go.jp/jp/bdmodel/040623minutes.html
● 国別援助計画改訂に向けての意見交換会(6月 19 日・ダッカ)
6月 19 日、バングラデシュの政府・実施機関の経済協力関係者は、バングラデシュ国別援助計画の改訂に向けての意見交換会を大使館で行いました。
http://www.bd.emb-japan.go.jp/bdmodel/capbangla.htm
ご意見等ありましたら大使館までお寄せください。
mail@embjp.accesstel.net
[おしらせ]
● ハルタル等(7月 11 日・バングラデシュ全国)
当地報道によれば、アワミ連盟下部組織「スロミック・リーグ(労働者連盟)」他により結成された労働者団体(工業労働者保護調整評議会)は、左派 11 党連合等の支援を受け、7月 11 日(日)、日の出から日没までの間、バングラデシュ全土においてハルタルを実施することを発表しています。主な理由として、失業問題を掲げており、国営企業の民営化政策の撤回及び閉鎖された工場の操業再開等を要求しています。また、上記評議会等は、同日、ハルタルと合わせて 24 時間の工場ストライキも実施することを発表していますので、上記ハルタル・ストライキ当日は、工場が集中しているテジガオン地区など、群衆が集まる地域周辺へ出掛けることは避けるようにしてください。また、テレビ、ラジオ、新聞等により、今後の動向に注意を払ってください。
● 大使館領事・当番者用緊急電話番号の変更
7月 11 日(日)午前零時以降、事件・事故等の用件で昼夜を問わず当館にご連絡される際の、当館領事及び当番者用緊急電話番号が以下の通り変更となりますので、ご案内致します。
領事担当: 0173-037811 (旧: 0189-238909 ) , 0173-037814 (旧: 0189-238915 )
当番者用緊急電話番号: 0173-037822( 旧: 0189-238922)
【3】特別寄稿「 JDS 『人材育成奨学計画』の挑戦」
( JICE 国際交流部留学生二課:中山映氏)
みなさんは「 JDS 」プログラムをご存知でしょうか?
JDS ( Japanese Grant Aid for Human Resource Development Scholarship =留学生支援無償)とは、 ODA 無償資金協力のスキームにおいて各国の若手行政官やビジネスマンを対象に、大学院(英語による修士課程)の奨学金及び本邦滞在費等を供与するプログラムで、アジア開発途上国の人材開発、とりわけ「各国における様々な開発課題の克服に貢献し得る人材の育成」を目的としています。
バングラデシュでは ERD (財務省経済関係局)を受入機関として 2001 年より開始されました。当初、第1フェーズとして3年間、総勢 70 名の留学生を日本へ送る計画が日バ両政府で取決められ、これまでに法律、経済、国際関係、 IT 等の分野を中心に1期生・2期生併せて 48 名が日本へ渡っています。
そのうち現在3名が既に帰国してそれぞれ職場復帰し、日本で培った専門知識、国際化時代に対応し得る行動規範や視点、新しい環境への適応能力や柔軟性を最大限に活かしながら、バングラデシュの社会・経済の発展に貢献するべく努力しています。
6月 13 日の夜には、大使公邸において本年7月1日に来日予定の JDS 留学生 20 名の壮行会が開催されました。平均倍率約 20 倍、4ヶ月間に渡る厳しい選考過程を勝ち抜いた留学生たちは今回で第3期生となります。
去る 10 日にダッカでの2ヶ月間に渡る事前日本語研修を終えたばかりということもあって、留学生たちは終始和やかな表情を見せながら、振舞われた日本料理を楽しんだ後、堀口大使を始め ERD ラーマン次官補、紀谷参事官、 JICA 坂本所長ら JDS 運営委員を前に日本語のショートスピーチを披露、また日本の「四季の歌」、バングラデシュの「トネ・ダシネ・プシュぺ・ボラ」など、両国の豊かな自然と文化を讃える代表的唱歌も合唱し、関係者に深い感銘を与えました。
JDS 留学生の選考過程においては、本プロジェクトの主旨に鑑み、高い語学力は勿論のこと、帰国後のバ国への貢献という視点も含めた研究計画の提出等が要求されます。書類選考、語学試験をパスした候補者は、日本の受入大学教授陣による専門面接(於:ダッカ)を経て、日バ双方から選出された本プログラム運営委員による最終面接に臨むことになります。
また日本の大学での授業及び論文は全て英語が原則ですが、日本での円滑な留学生活の一助とするため、そして滞在する日本への知識をより深めて欲しいという主旨から、最終合格者は来日前後に日本語集中講座の受講が義務になっていることも本プログラムの特徴の一つです。
私ども JICE におきましては、 ERD を中心とするバ政府及び日本大使館、 JICA のご協力のもと、公募に係る総合窓口、選考過程の後方支援、来日前後のオリエンテーション及び日本語研修、そして来日後の定期的なモニタリング、緊急時対応等を担当し、バ国に貢献しうる人材を目指した本計画のサポートをさせていただいています。
先月中旬から JICE 東京本部の担当となった私は、当地プロジェクト事務所の渋谷コーディネーターと密に連絡をとりながら業務を進めておりますが、今回初めてバングラデシュに出張し、3期生の見事なスピーチ、そして希望と意欲に満ちた彼らとの会話を通して、私自身も期待で胸が膨らむ思いがしました。
6月 17 日には今年度第1回の JDS 運営委員会が開催され、新たに3つの新規分野(医療行政、教育、環境政策)を含む新年度の募集要項が決定されました。年内に帰国予定の1、2期生のフォローアップ等課題は尽きませんが、また新たな気持ちで業務に邁進していきたいと考えております。
今般、日本へ旅立つ 20 名の大半は既婚者のようで、中には今回の留学が決定したことによる「駆け込み結婚(?)」もあったようです。愛する家族ともしばしのお別れになってしまうということで、寂しさと不安を隠せない留学生もいましたが、これらの困難をも克服し、日本で充実した留学生活を収めて、家族が待つ祖国の発展に寄与してくれることを切に願っています。
【4】駐バングラデシュ歴代大使の証言・第6回(第9代大使:竹中繁雄氏)「メグナ・グムティ橋」
去る5月、 10 年ぶりに1週間ほどダッカを訪れる機会に恵まれました。
その間に私がその建設に関する日本・バングラ間の交渉に深く関わった事のあるジャムナ橋の視察を思い立ち、車で片道3時間半の道のりを往復してきました。かつてジャムナ川の橋梁建設予定地をヘリコプターで1回、ボートで1回現地視察することがありましたが、今そこには長大な橋が見事な弧を描いて立っています。
川面のそばまで下りて、橋の先端が小雨に煙る遙か向こう岸に消えていく様子を眺めているうちに、記憶のかすれた 10 年前のメグナ・グムティ橋の開通式のことが突然よみがえって来ました。
メグナ・グムティ橋は首都ダッカからバングラの海の玄関であるチッタゴンに伸びる幹線にかかる日本の無償協力の象徴とも言える大プロジェクトです。橋の長さこそ 1,400 メートルでジャムナ橋には及びませんが、その国民経済的な価値に関してはバングラ国内のどの橋にもひけを取りません。
こういう大きな経済協力案件の完成式には日本から有力な政治家に来てもらうのが通例で、この時もこの日本の貢献にふさわしい方に出席して欲しいと考えて、本省といろいろ相談した結果、日本・バングラ議員連盟の三塚会長と同連盟の幹部である櫻井新、河村健夫両議員に出席してもらう事になりました。
日本からの出席者も固まり、開通式の準備が着々と進みましたが、その過程でバングラ政府側から出て来た式次第の原案を見てみると、式場のひな壇には三塚会長と私だけしか着席できないことになっています。
私としては、スピーチはこの2名だけにしてもひな壇の着席者については日本から折角やってこられた議員全員が何とかその中に加えられないかと思い、館員に色々と交渉してもらいましたが、バングラ側の態度が固く、一向に埒があきません。そこでほかに打ち合わせたい話もあって、開通式の数日前に私がオリ・アーメッド道路大臣のところに乗り込み、直談判することになりました。
こちらの要望に対する道路大臣の反応はバングラ側にも壇上に乗せろと要求する有力者が多く、それらを何とか抑え込んでいる状況にあるので私の要望についても勘弁して欲しいというものでした。
相手の事情はよく分かりましたが、ここで完全撤退するのも芸がありません。そこで私の方から「自分のアイデアは断念するが、その代わりあなたのスピーチの中でお2人の貢献について言及してくれないか」と代案を出してみましたところ、「そちらが英文でその部分を書いてくれたら、それを読み上げても良い」とも前向きの返事を得ました。
私は早速事務所に帰るとお2人とその2人に代表される日本・バングラ議連のメンバーの皆さんの二国間関係発展への貢献振りを文章にしたため、大臣の所に届けておきました。
さて、開通式の当日は日本の初秋を思い出させる様なカラッと晴れ上がった絶好の天気です。この日の為に急拠作られた特設の会場は 2,000 人を超えると思われる出席者で立錐の余地もありません。ヘリコプターでダッカから駆け付けたジア首相が会場前方に作られたひな壇を登るとすぐにイスラムのお祈りが会場に流れ、式典が始まりました。
まずはプロジェクト完成にいたる経緯の報告があり、それから関係者の演説が続きます。日本大使の私のスピーチの後がいよいよ道路大臣の出番です。
アーメッド大臣は最初の 20 分ほどベンガル語で話していましたが、流石に政治家だけあって話がうまく、それに観衆が反応している様子がベンガル語の分からない私にも手に取るように分かりました。
話が一段落すると大臣は会場最前列に坐っていた日本からの来賓2人を手招きで壇上に誘い、2人がプラットフォームに上がった所を見計らって会場に向いてふた言み言語りかけました。すると会場を埋め尽くした大観衆から2人に向かって一斉に大きな拍手が起こるではありませんか。
議員の先生方も観衆の方を向いて両手を大きく振ってこれにごく自然に応えたことは言うまでもありません。これに呼応して拍手はますます大きくなり、こうした壇上と観衆とのやり取りの中でついに拍手は会場を揺るがさんばかりになりました。
結局この時がこの日の式典の中でも最も印象的で、盛り上がった場面となりました。アーメッド大臣は私の作った官僚的な作文よりもはるかに効果的にバングラ人の心をつかむ術を知っていたのです。
1つの橋が、単にその両側の岸を結びつけるだけでなく、二つの国の人々の心までを結びつける効果も生めるのだと実感し、経済協力担当者の喜びを噛みしめることのできた一瞬でした。 櫻井議員は現在は議連の会長代行として、河村議員は文部科学大臣としてそれぞれ活躍しておられることは読者の皆さんのご承知の通りです。
(竹中大使は 1993 年5月から 1995 年8月まで当地在勤)
【5】バングラデシュ名所案内・第7回「ダッカ近郊の家庭訪問」
今回はバングラデシュの村の暮らしの様子についてご案内したいと思います。今回訪問したのはダッカ・バリダラ地区より車で約1時間あまりのガジプール県カリゴンジ郡、ナゴリ・ユニオン(バングラデシュの最小の行政単位)のコラン村です。コラン村の人口は約 5,000 名、村人のほとんどがキリスト教徒ですが、ヒンドゥー教徒の住民もいます。
首都ダッカとジョイデプール、マイメンシン県をつなぐ幹線道路から外れると建物がまばらになり、視界に入る緑がぐんと濃くなってきます。線路や小さな橋をいくつか渡って木々に覆われた細い横道に入ると、集落や畑がありました。途中で当地シェラトンホテル等に豚肉を卸しているという農家を訪れました。
道のすぐ脇の竹葺きの屋根に竹製の囲いの中で、2日後に出荷されるという体長約1メートル前後の黒豚約 10 匹が寝ています。その囲いを数人の男達がたばこを吸ったりしながらゆったり見張っていました。聞いてみると1匹あたり約 5,000 タカ(1タカ=約2円)で売れるそうです。奥にもいるというので行くともう少し小ぶりの豚が眠っていました。こちらはおよそ 3,000 タカ前後、更にその奥のピンク色で青い目の体長約 1.3 メートル前後の豚が1匹、こちらは約1万タカ前後だそうです。
豚小屋のそばには大量の稲わらが積み上げられていて、そこから2メートル程低い土地は普段は田圃ですが今は川から溢れた水で池になっており、そばで雌牛がゆったりと草を食べ、生後1月ぐらいの子牛が寄り添っていました。
更に奥へ車を進めると、道路脇に雑貨屋や小さな野菜市場が集まっている場所がありました。そこが今回訪問するマルシェル氏の集落への入り口でした。マルシェル氏は大使館員の家でこれまでの約 18 年間、料理・家事手伝いとして働いて来ました。当地では中流以上の家庭では料理・火事手伝い、子守、車の運転などの為に使用人を雇うのが一般的で、当地の外国人の生活も同様にこうした使用人によって支えられています。
マルシェル氏の家族は妻と息子夫婦、3歳の女の子1人の5人で、牛3頭、山羊1頭に鶏をたくさん飼っています。お嫁さんは妊娠していて、3ヶ月後には家族が一人増えるそうです。家はきれいに掃き清められた中庭を囲む4棟で構成されています。
マルシェル氏と妻の住む家の向かいが息子夫婦の家、二つの家の間に台所・食料貯蔵室、食堂用の別棟があり、その向かいに納屋兼牛小屋があります。トイレは牛小屋のとなりの少し奥まった所にあり、コンクリート造りで2部屋あり清潔な様子でした。どの建物もトタン屋根と白塗りの壁(牛小屋は煉瓦がむき出し)の美しい作りでした。
部屋の中にも外にもチリ一つなく、なべや壺もぴかぴかで、毎朝泥で塗り直されているのでしょう、竈も新品同様の美しさでした。家に入って部屋の正面にはたくさんのキリストの絵、赤ちゃんの絵などが飾られています。大きなベットが一つ、鍵のかかる飾り棚(特別な時に使う為のティーカップなどがきれいに並べてある)、サリーや服を掛け、靴を並べる棚があり、きれいに整理整頓されて本当に気持ちの良い家でした。
家の裏手は大きく立派に枝を広げ、たくさんの実をつけたジャックフルーツの木2本に覆われており、祖父の代からこの場所に住んでいるという歴史を感じました。その他にもザボン、マンゴー、グヮバ、オリーブ(ジョルパイ)、マホガニー等生活に役立つ木々が整然と植えられているのに感心しました。
家より3メートル程低い場所にある向かいの田圃は雨期の今、川が溢れて池になっていますが、池までの斜面を利用してネットが張られ、キュウリが植えられていました。目の前の池の水面にはバングラデシュの国花であるシャプラの花のつぼみが顔を出しています。
向かいの田圃は 320 キロもの収穫がある良い土地なのですが、家の新築工事に 95000 タカの借金をしたため、借金を返済するまで稲作が出来ないということでした。また息子さんには定職がないので仕事を探している由でした。
家や周りの土地を見せてもらい、何時の間にか集まった隣人達も交えてたくさん写真を撮り、青空の下、中庭でお茶や果物、クッキーなどを頂きました。豊かな自然と素朴で優しい人々とふれあう機会を得て幸せな時間を過ごしました。
(大使館広報文化班・河野秀美)
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