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日本・バングラデシュ交流メールマガジン (第 4号・ 2004/04/01 )
? 日本とバングラデシュの橋渡しのために ?
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□ 目次 □
【1】堀口大使メッセージ「バングラデシュの医療と『クムディニ精神』」
【2】最近の日本・バングラデシュ関係
[これから]
●日本人写真家によるバングラデシュ写真展(4月2〜 13日・ダッカ)
●「バングラデシュの医療・保健事情」に関する情報交換会
(4月 18日・ダッカ)
●ナショナル・プレス・クラブでの堀口大使講演会(4月 20日・ダッカ)
[これまで]
●開発援助勉強会「貧困削減戦略文書とバングラデシュ開発フォーラム」
(3月 31日・ダッカ)
●日本留学説明会(3月 22〜23日・クルナ)
●債務救済方式の変更に伴う交換公文の署名(3月 21日・ダッカ)
●日本の開発援助に関する定期政策協議(3月 21日・ダッカ)
●第 28回日本語弁論大会(3月19日・ダッカ)
【3】特別寄稿「バングラデシュの総合雑誌『遡河』を編集して」
(広島大学大学院国際協力研究科助教授:外川昌彦氏)
【1】堀口大使メッセージ「バングラデシュの医療と『クムディニ精神』」
先日、ナラヤンゴンジのミルザプール村にあるクムディニ病院を、草の根無償資金協力で供与した医療器材の設置状況を確認するため館員と訪ねました。同病院の建物は 1946年に完成したものですが、ベッド数750とバングラデシュ最大級の病院で、天井は高く病室の両サイドが広い庭に面しているため天井のファンだけで涼しく、病院の中も外もチリ一つ落ちていない清潔さが際だっていました。患者は病院の快適な環境を見ただけで病気の半分は治るとの創立者の信念を今も守っているとのことでしたが、医者と看護婦の献身的な働きぶりや、患者たちのリラックスした姿が大変印象的でした。
同病院の創立者 R.P.シャハは7歳の時に母クムディニを出産の際に失ったことから、成人して石炭の販売およびジュート・ビジネスで財をなすと、1944年故郷ミルザプールで村人への無料の医療を目指して病院を開設しました。彼はさらに同じ年に近代的女性教育のための学校として、曾祖母の名を取った全寮制の女子学校「バラテスワリ・ホームズ」も設立し、1947年にはこれら事業の運営を目的とした「ベンガル福祉信託」を設けました。同信託は傘下のジュート業、河川運送業などからの収益をもって、これら病院、学校の運営に当たるための団体です。
R.P.シャハが1971年に息子とともにパキスタン軍に殺された後、シャハの娘が運営に当たり、2000年にその息子すなわちR.P.シャハの孫に交代しましたが、この間、「絶えざる前進、自己犠牲と人類救済」の信念のもとに、看護婦養成学校、女子医学学校、貿易訓練学校、手工芸学校を次々と設立する一方、収益部門としてガーメント会社や製薬会社を興し、従業員2500人、パート5000人を抱える一大コンプレックスとなっています。事業が大きくなった後も、同信託の主たる目的は上記福祉事業の費用を賄うこととされ、個人の利益を図ってはならないことが約款に明記されているそうです。
当地に着任して以来、少なからぬ数のバングラデシュ人が重病でもないのにタイ、シンガポールあるいはインドの病院に治療に行くのを見聞きするにつけ、独立後 32年がたち、多くの優秀な医者が外国に留学などして個々の医療レベルは決して低くないにもかかわらず、当国に総合病院一つないのは何故だろうとの疑問を持ちました。いろいろな機会に保健大臣、大蔵大臣を含む多くのバングラデシュ人にその理由を尋ねてみましたが、問題は病院のマネジメントにあり、その改善のためには医者の兼業禁止が不可欠とのことでした。医者が仁術よりも算術を優先するのは他の国でも見られることですが、当国では度が過ぎているというのが多くの人の意見です。同時に私益を公益に優先させているのは医者だけではないこと、従って政治家を含む当国のエリート全員に公益認識の徹底が重要であることを少なくない数のバングラデシュ人が指摘していました。
次の問題はこの総論的指摘をいかに各論的実践に移すかという点ですが、この難問について、「クムディニ精神」を共有する医者たちは比較的安い月給で同病院での治療に専念しています。同病院の 60年におよぶ「絶えざる前進、自己犠牲と人類救済」の実績は、他の病院、さらに他の分野における公益優先思想の実現が決して夢ではないことを証明しているように思われます。草の根無償で供与した医療器材の確認作業を見ながら、「クムディニの精神」が他の病院、他の分野に広がっていくことを心から祈った次第です。
【2】最近の日本・バングラデシュ関係
[これから]
●日本人写真家によるバングラデシュ写真展(4月2〜 13日・ダッカ)
4月2日(金)から 13日(火)まで、写真家の 小林博子氏がバングラデシュの女性を中心に子供達、自然風景等をテーマに撮影した写真の展示会 ”To Meet Bengal's Women, I wish to go to Bangladesh once again.” が、ダッカのバングラデシュ・シルポコラ・アカデミー・ギャラリー(住所: Segun Bagicha、電話:02-9562801〜4)にて開催されます。開催時刻は、2日オープニングは午後6時15分から、金曜以外は午前11時〜午後7時、金曜は午後3時〜午後7時です。日本の風景写真や生け花作品も展示されます。小林博子氏はNGO「ハンガー・フリー・ワールド」の会員でもあり、日本でのバングラデシュ写真展開催・写真集発行の収益金からバングラデシュの女性に対して奨学金を支給する「the Hunger Free Hiro Scholarship」を設立するなど、多彩な活動を行っています。
●「バングラデシュの医療・保健事情」に関する情報交換会
(4月 18日・ダッカ)
当地で生活する在留邦人の皆様及び医療・保健関係者の皆様に幅広くご参加いただき、当地の医療・保健事情について説明・情報交換を行うための会を、4月 18日(日)午後5時より当館会議室にて開催します。冒頭、当館の松原医務官と、国際保健人口研究所の我妻先生から最新の状況をご説明いただいた後、質問・情報交換に移ります。健康に生活するため当地の医療・保健事情を知りたい一般の方、また医療・保健分野で仕事をしており情報をお持ちの方のいずれも歓迎しますので、出席希望者は大使館総務班までご連絡下さい。(電子メール: mail@embjp.accesstel.net )
●ナショナル・プレス・クラブでの堀口大使講演会(4月 20日・ダッカ)
4月 20日(火)、ナショナル・プレス・クラブの主催により、同クラブのジャーナリストを招いての堀口大使講演会が開催される予定です。日本・バングラデシュ関係について、政治、経済、開発、文化・人的交流など幅広い分野を取り上げます。講演に際して参考となるようなご意見、情報やエピソード等がありましたら、当館までお寄せいただければ幸いです(電子メール: mail@embjp.accesstel.net)。
[これまで]
●開発援助勉強会「貧困削減戦略文書とバングラデシュ開発フォーラム」
(3月 31日・ダッカ)
3月 31日、当館会議室にてバングラデシュ開発援助勉強会「バングラデシュ貧困削減戦略文書(PRSP)策定とバングラデシュ開発フォーラム(BDF)に向けて日本は何を発信すべきか」が約30名の出席のもと開催されました。席上資料や議事録は近日中に次のウェブサイトに掲載されます。
http://www.bd.emb-japan.go.jp/jp/bdmodel/index.html
●日本留学説明会(3月 22〜23日・クルナ)
3月 22〜23日、クルナ大学中央講堂にてクルナ市では初めての日本留学説明会を行いました。クルナ大学、クルナ工業大学より2日間で延べ750名が集まりました。2日間の開催中のクルナ市の学生達とのふれあいを通じてクルナ市の学生の真剣さと日本への留学熱の高さが感じられました。
●債務救済方式の変更に伴う交換公文の署名(3月 21日・ダッカ)
3月 21日午後、債務救済方式の変更(債務救済無償から債務削減への切り替え:対象債務総額約1580億円)に伴う交換公文の署名が堀口大使とベク大蔵省経済関係局次官により行われました。プレスリリース(和・英)、大使スピーチは次のウェブサイトに掲載しています。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/16/rls_0321a.html
http://www.bd.emb-japan.go.jp/en/news/pr/09pressdebtcancel210304.html
http://www.bd.emb-japan.go.jp/en/embassy/speeches/13smtdebtcancel210304.html
●日本の開発援助に関する定期政策協議(3月 21日・ダッカ)
3月 21日午前、現地レベルで日本の開発援助に関する定期政策協議(バイアニュアル協議)が開催されました。実施中・新規案件に関する協議に加え、見返り資金の活用促進、債務救済方式の変更に伴う協議枠組みの設定、分野別政策対話も行われました。大使冒頭発言は次のウェブサイトに掲載しています。
http://www.bd.emb-japan.go.jp/en/embassy/speeches/13sphbiannual210304.html
●第 28回日本語弁論大会(3月19日・ダッカ)
3月 19日にBRACセンター(モハカリ)にて、ダッカ日本語教室・ダッカ大学現代言語研究所日本語学科共催、日本人会・大使館講演による日本語弁論大会が開催されました。参加者18名のスピーチはいずれも良く準備されたすばらしいものでしたが、ダッカ大学日本語学科のJahir Raihanさん(日本語と私)が1位、ダッカ日本語学校のZiauddin Mahmudさん(私の夢の国)が2位、同じくダッカ日本語学校のFatema Ferdousさん(老人ホーム)が3位を受賞しました。また、ダッカ日本語学校のJeet Zh.Khondkerさん(独立から33年たって)、Yusha Al Khondkerさん(僕の話し方の問題)兄弟が特別賞を受賞しました。堀口大使は参加した皆さんに対して、様々な機会を捉えて日本へ行き、さらに日本語を勉強して日本を学び、今後とも両国間の架け橋として活躍されることを希望する旨述べました。
【3】特別寄稿「バングラデシュの総合雑誌『遡河』を編集して」
(広島大学大学院国際協力研究科助教授:外川昌彦氏)
『遡河』(そか)は、ベンガル語文学の翻訳家としても知られる鈴木喜久子さんが 1988年に創刊したバングラデシュの社会と文化に関する専門誌で、以来、年に1回のペースで刊行が続けられています。
もともと、バングラデシュと関わりのある方々の寄稿によって編集される同人誌でしたが、様々な分野で日本とバングラデシュの交流が深まることで、やがて読者の裾野も広がり、日本では唯一のバングラデシュの総合雑誌として知られるようになりました。
寄稿者の皆さんとバングラデシュとの結びつきは様々ですが、誰もがバングラデシュとの関わりを深めるにつれ、知らず知らずに愛着やこだわりを持つようになるようです。とかく貧困や開発と結び付けて語られることの多い日本でのイメージとのギャップに、戸惑いを覚えることも多くなりました。
筆者もまた、まだ大学生の頃にバングラデシュを訪れて以来、その不思議な魅力に取りつかれ、気がついたらバングラデシュと関わる仕事をするようになっていました。そして、今ではこの『遡河』の編集が、数少ない仕事の息抜きとなっているような毎日です。
『遡河』は、そんなバングラデシュの人々や社会を、様々な形で日本の読者に紹介することを目的に刊行されています。バングラデシュについてこれから知りたいと思っている方にも、またバングラデシュに深いこだわりを持っている方にも、興味の持てる内容となっています。 13号からは、編集部の若返りをはかり、また紙面のレイアウトなども一新することで、一層の内容の充実に努めています。
このたび刊行された最新号(第 14号)では、「バングラデシュの歴史と文化」という特集のもとで、尽きないバングラデシュの魅力を紹介しています。また、話題の映画紹介やダッカの最新情報、連載読み物なども掲載しています(『遡河』第14号・目次は下記をご参照下さい)。
これまで刊行された『遡河』のバックナンバーの目次は、最新号の巻末に紹介しています。また、インターネットでも公開されています。『遡河』の購読のお申し込みやバックナンバー等に関しては下記のアドレスをご参照下さい。
http://www5a.biglobe.ne.jp/~folk/Soka-bak.htm
『遡河』編集部では、読者の皆様の感想やご意見を取り入れつつ、紙面づくりに反映させたいと思っています。また、様々なバングラデシュとの関わりを通した『遡河』への寄稿も歓迎しています。この機会に、定期購読をお勧めします。
<『遡河』第 14号・目次>
特集・バングラデシュの歴史と文化
グラビア写真 現代バングラデシュ絵画の形成より
鈴木喜久子 バングラデシュのカトリック(1)〜ポルトガルの支配時代〜
重松伸司 「たいが」の文明、「おおかわ」の文明
臼田雅之 現代バングラデシュ絵画の形成
谷口晋吉 18〜20世紀ベンガルの富農層研究についての覚え書き
小野理恵 バングラデシュ農村の女性の知恵―しとやかさとしたたかさ―
南出和余 バングラデシュ初等教育の歴史
ハリマ・カトゥン作/前村恵訳 チョラ 迷子の小さなトリのひな
福井宗芳 渡辺天城上人の一周忌
高田峰夫 FEER事件が物語るもの
矢嶋ルツ 映画『マティル・モイナ』(タレック・マスッド監督)の紹介
外川昌彦 ベンガルの季節のめぐり(2)
藤原敬介 ムル人の文字
岡田菜穂子 第一回日本人によるベンガル語スピーチコンテスト
<書評>
バングラデシュへの扉を開く・『花の香りで眠れない』
フマユン・アザド著 鈴木喜久子訳 渡辺一弘
『バングラデシュを知るための60章』
大橋正明・村山真弓編 平山雄一
●本メールマガジンは、当地在留邦人の皆様及び希望者に送付しております。本メールマガジンの配信開始・変更・中止のご希望がありましたら、編集部までご連絡いただければ幸いです。
●本メールマガジンに対するご意見・ご感想、今後掲載する記事・情報に関するご示唆等をお待ちしております。また、本メールマガジンの特別寄稿を執筆頂ける方を(自薦・他薦とも)募集しております。お気軽に編集部までご連絡いただければ幸いです。
●編集部のメールアドレスは次の通りです。
mail@embjp.accesstel.net
発行:在バングラデシュ日本国大使館
Embassy of Japan (本館)
Plot#5& 7 Dutabash Road
Baridhara, Dhaka, Bangladesh
電話 (880-2)881-0087
FAX(880-2)882-6737
(別館/領事部)
House#NE(M)-1, Road#84
Gulshan, Dhaka, Bangladesh
電話 (880-2)881-2005
FAX(880-2)882-3670
http://www.bd.emb-japan.go.jp/
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