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バングラデシュ政府2008-2009年度予算

バングラデシュ政府2008-2009年度予算(概要とコメント)

>>>「バングラデシュの財政について(当館作成資料)」はこちら

1.概要
(1)予算編成の基本方針
(イ)次年度予算編成にあたっての全般的な目標はマクロ経済安定、経済成長の促進、貧困削減。これらに加えて優先すべき課題として、生活必需品価格の限界水準内での維持(within tolerable limit)、雇用創出、社会保障プログラムの拡大、地域格差の縮小、農業生産の増大、食料安全保障、発電量の拡大、通信ネットワーク開発を挙げている。
(ロ)また、次年度予算では、特に貧困削減が重視されており、予算全体の58.3%が貧困削減プログラムへの拠出として予定されている。

(2)予算の骨格と財政赤字動向
(イ)予算規模は9,996億タカ(対GDP比16.3%)と対前年度補正比で6.8%増。うち、一般予算が6,792億タカで対前年度補正比17.3%増、年次開発予算(ADP)が2,560億タカ(対GDP比4.2%)で対前年度補正比13.8%増。なお、開発予算の43.0%が国内資金、57.0%が外国援助となり、ADPにおける外国援助比率は高まった。
(ロ)歳入は6,938億タカ(対GDP比11.3%)と対前年度補正比14.6%増。うち、税収が5,679億タカで18.3%増、税外収が1,259億タカで0.5%増。税収の内訳を見ると、対前年度補正比で付加価値税が19.0%増(2,025億タカ)、所得税が18.6%増(1,305億タカ)、輸入税が16.8%増(1,086億タカ)、補完税が19.5%増(953億タカ)とそれぞれ増加。
(ハ)新年度予算(一般予算+開発予算)の優先分野(金利支払及び一般行政を除く)は、教育・技術分野(12.9%)、農業(10.0%)、国防(9.2%)、社会保障 (8.8%)、治安(7.4%)であり、これらの分野に優先的に配分。なお、社会保障の大幅な増額(対前年度補正比69%増)が今年度予算の特徴。
(ニ)ADP歳出では、地方自治・農村開発(22.6%)が最も配分が多く、次いでエネルギー(16.8%)、教育・技術(13.7%)、運輸・通信(13.6%)、保健(9.5%)、
農業(9.0%)、社会保障(8.6%)となっている。
(ホ)今年度補正予算の財政赤字は、3,307億タカ(対GDP比6.2%)と当初予算見込み2,984億タカから増加。新年度の財政赤字は3,058億タカ(対GDP比4.99%)としており、対GDP比5%以内に収めているものの、金額的には今年度補正に迫る大きな赤字を見込んでいる。

(3)主要政策
(イ)経済
(a)新年度の経済成長は6.5%を、また、中期的(09年度から11年度)な経済成長は7〜8%程度を見込んでいる。インフレ率は9%を見込んでいる。
(b)最近の食料・肥料・燃料の価格上昇への対応措置として、政府は現行の補助金政策を継続。1,364億タカ(対GDP比2.2%)を補助金として予算化している。

(ロ)社会保障、エンパワメント
最近の世界的な食料不足の貧困層への影響緩和のために、既存の社会保障プログラムの拡張を行なった。1,693億タカ(対GDP比2.8%)が充てられる予定。主要な政策は以下の通り。
(a)失業者に100日間の雇用機会を提供する雇用創出プログラムの実施。200億タカをかけて2億人日分の雇用を提供する(1人日の手当は100タカ)。当国の社会保障プログラムとしては過去最大となる。また、Food-for-Workプログラムの拡張も計画しており、158億タカを投入し追加で1億4千万人日の雇用を提供する。
(b)その他、自営業雇用拡大策として、マイクロクレジットによる自営業支援を行なう団体への支援の拡張や、女性・子供のエンパワメントプロジェクトの拡張を行う。

(ハ)食料保障と食料管理
次年度は、国内調達・海外輸入を合わせて、320万トンの穀物を政府が調達する計画。うち300万トンは、公開市場販売(Open Market Sales: OMS)やFood-for- Workプログラム等を通じて分配する予定。

(ニ)農業、農村開発
(a)今年度、ディーゼル燃料型の灌漑用ポンプ使用の農民に、ポンプ使用(による食料増産)奨励のために補助金を支給した。次年度も、ディーゼル価格上昇の影響を緩和するための農民支援策として、54億タカのディーゼル補助金を予定している。
(b)農業・農村開発分野には、予算全体の16.4%となる1,641億タカの配分を予定している。

(ホ)インフラ整備
(a)電力・エネルギーセクターには、対前年度補正比21%増となる434億タカ(予算全体の4.3%に相当)の配分を予定している。電力セクターでは、民間による4発電所、政府による3発電所の建設が進んでおり、現在の電力の需給ギャップ縮小に向けて取組中。エネルギー・鉱資源セクターでは、75%の商用エネルギー源である天然ガスが3年以内に枯渇の危機に瀕していることから、天然ガス開発に大型投資を行なう予定。また、政府は国家石炭政策の策定を進めており、近日中に発表する予定。
(b)ICT、通信、運輸セクターに、633億タカ(予算全体の6.6%に相当)を配分予定。ICTは国の重点分野であり国家電子政府戦略を策定中。またハイテクパークが今年末に完成予定。

(へ)人的資源開発
人的資源開発へは、予算全体の21.1%に相当する2,111億タカを配分予定。教育セクターにおいては、特に中・高等教育における教育の一定の質の確保を行なうことを重視する。また、保健・栄養セクターについては、保健・栄養・人口プログラム(HNPSP)を継続中。

(ト)気候変動
気候変動への適応のために気候変動基金を新設、30億タカを配分予定。

(4)歳入向上策
(イ)徴税率向上対策
当国の税収の対GDP比率は近隣諸国と比べても著しく低いため、徴税努力によりこの比率を上げることが第一の目標。そのために、新規課税対象者の割り出し、透明性向上、歳入行政の説明責任と効率性の向上、Tax-Friendlyな環境の創出を行なう。具体的には、広告・宣伝による納税義務の認知度向上や、税支払い手続きの簡素化等の現行の取組を継続する。
(ロ)徴税制度再構築
(@)現在の3段階の輸入関税を4段階に変更。これにより原料や設備機械(capital machinery)への輸入関税が減免となる。
(A)農業への税インセンティブの適用。昨今の世界的な食料危機を鑑み、輸入への依存度低減のために国内農業生産の拡大策を採用する方針。そのために各種の農業インセンティブを提案。具体的には、農業専従者の徴税免除額の引き上げ、徴税免除期間の延長(2011年まで)、農業目的の設備機械への輸入関税の引き下げなど。
(B)中小企業への徴税免除額の設定。これまで中小企業への税減免策は存在しなかったが、次年度より年間売上額240万タカ以下の企業については免税とする等、中小企業徴税優遇策を提案。また、ICTセクター推進のために、IT企業は2011年まで課税対象外とするなどICTセクター優遇措置も提案。
(C)新設企業への期間限定減免税(Tax Holiday)措置は、若干修正があるものの2011年まで継続。
(D)他方、個人の課税最低所得額は、昨今の価格高騰にも関わらず見直しは行われず、現行の15万タカを最低水準とすることで継続。

(5)その他
昨今の物価高を鑑み、公務員の給与を一律20%引き上げる。

2.当館コメント
(1)全般
(イ)新年度予算は対前年度補正比6.8%増と例年と比較して拡張規模はやや抑え気味であるが、1兆タカに迫る過去最大の予算規模となった。予算拡大の主な要因は、一般行政関連経費の大幅な増額、食料・肥料・燃料への補助金の拡大である。このように、食料・肥料・燃料の国際的な価格高騰は、補助金政策を取る政府の財政を圧迫しており、予算拡大の一因となっている。
(ロ)また、次年度インフレ率は9%を見込んでいるが、新年度予算では、価格高騰に対する中長期的・マクロ経済的な対応策はほとんど見られず、補助金政策など短期的・一時的な政策に留まっているという指摘がある。
(2)財政赤字
(イ)今年度の財政赤字は対GDP比で約5%を予定しているが、今後の国際価格の動向次第では更なる赤字幅の拡大も懸念されており、今年度の政府の財政運営にあたっての最大の懸念要素である。このような状況下、石油製品の国内価格は07年4月以降一定に保たれているが、国際価格に合わせた国内価格の見直しの必要性が指摘されている。既にバ石油公社は、石油製品価格の見直しを政府に提案しているが、食料等の他の生活必需品の価格高騰が著しい現状で実現が難しい状況との指摘もある。
(ロ)また、財政赤字を補填するために、次年度予算では巨額の国内借入を予定しているが、これにより民間借入を圧迫するクラウディング・アウトや、インフレ圧力などの負の影響が起こることが懸念されている。
(3)開発予算(ADP)
新年度の開発予算は、今年度当初予算からはわずかに減額になっている。これは、毎年ADP実行率が低いことから、次年度はより現実的な予算としたことが理由とされている。また、ADPにおけるドナー依存率はここ数年50%以下で推移してきたが、今年度補正では64%に拡大しており、次年度予算でも57%を外国援助から予定するなど、援助依存比率が拡大している点が懸念される。
(4)貧困削減、社会保障政策
新年度予算では、貧困削減の重視、特に社会保障政策の拡張が最大の特徴となっている。この政策については、識者からは概ね評価されているが、最大の課題はきちんと履行されるかどうかの実現性にある。また、格差問題については、新年度予算では特に地域間格差の問題を取り上げ、貧困地域への配分を多くしており、大きな前進と言える。
(5)民間セクター
ビジネス界にとっては、法人税率引き下げや原料関税率引き下げ、期間限定減免税(Tax holiday)の継続など、好ましい要素が多く盛り込まれており、反応も概ね好意的である。しかし政府が巨額資金を国内借入により調達することから、民間資金調達への影響(クラウディング・アウト)が懸念されている。



予算関連資料は、 バングラデシュ財務省財務局ウェブサイトに掲載:

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