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バングラデシュ政府2007-2008年度予算(概要とコメント)
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1.概要
(1)予算編成の基本方針
経済面における主な課題は、マクロ経済安定、経済成長、インフレ、民間セクター主導による成長に向けた阻害要因の改善、貧困削減、地域及び所得格差の是正、食糧セキュリティの7項目とし、これら諸課題に対する取り組みを目指す。
(2)予算の骨格と財政赤字動向
(イ)予算規模は8,714億タカ(対GDP比16.4%)と対前年補正比で30.4%増。うち、一般予算が5,387億タカで対前年度補正比18.4%増、年次開発予算(ADP)が2,650億タカで22.7%増。開発予算の51.1%が国内資金、48.9%が外国援助。
(ロ)歳入は5,730億タカ(対GDP比10.8%)と対前年度補正比15.8%増。うち、税収が4,584億タカで16.8%増、税外収が1,146億タカで12.1%増。税外収のうち、付加価値税が16.1%、輸入税が13.0%、所得税が21.4%とそれぞれ増加。
(ハ)新年度予算(一般予算+開発予算)の優先分野(金利支払及び一般行政を除く)は、教育・技術分野(15.6%)、運輸・通信(9.1%)、農業(9.1%)、地方自治・農村開発(8.6%)、防衛(6.8%)に優先的に配分。
(ニ)ADP歳出では、例年と同様に、地方自治・農村開発(21%)が最も配分が多く、次いで運輸・通信(17%)、エネルギー(16%)、教育・技術(15%)、農業(10%)、保健(9%)となっている。
(ホ)今年度の財政赤字(補正)は、1,736億タカ(GDP比3.7%)と当初予算見込み1,719億タカからの微増に留まった。新年度の財政赤字は2,984億タカ(GDP比5.6%)と大幅な拡大を見込んでいる。
2.当館コメント
(1)全般
新年度予算は対前年度比30.4%と例年以上に規模が拡大され、拡張型、強気の予算編成となった。予算拡大の主な内訳は、一般予算とりわけ一般行政関連経費の大幅な増額並びにバングラデシュ石油公社(BPC)による政府保証債務の予算化である。
(2)インフレ対策
イスラム財務担当顧問は、予算演説で必需品(食糧)の物価高騰に対する懸念について言及し、中央及び地方レベルで設置されている作業委員会による必需品価格のレビューの継続、政府による必需品の輸入、社会保障プログラムの拡大、農産物の生産性向上を目的とした農業セクターへの補助金の拡大、及び必需品(食糧)の関税撤廃等を通じたインフレ軽減策を講じる旨を強調しつつ、来年度にインフレ率は6.5%前後に収束するとのやや楽観的な見通しを示した。他方、食糧輸入の拡大はタカ安を招き更なる物価高騰の可能性も指摘されており、今後のバングラデシュ銀行(中央銀行)の金融政策運営にも注視したい。
(3)民間セクターへの影響
歳入を大幅に超える財政支出の拡大は財政赤字の拡大をもたらしており、財政赤字を埋めるための国内借入れによって、国内の民間資金を圧迫するクラウディング・アウト、それに伴う民間企業の借り上げコストの上昇が引き起こされる可能性が指摘されている。とりわけ輸出の4分の3を占める縫製輸出に関しては、新年度、縫製産業機械の関税免除が撤廃される予定であり、国際的な競争力低下が懸念されるため、産業界からは右関税免除の撤廃に反対する声があがっている。
(4)電力
近年社会問題化している電力不足に関し、電力プラントのリハビリ、民間セクターからの電力購入、並びに来年度345メガワット(MW)、2009年度900MW、及び2010年度1,050MWと今後3年間で2,295MWの新規供給を行う改善策を打ち出した。新規電力プラント建設に関しては、現在、上記の新規供給を目標に複数の具体的な案件が政府内で検討されているものの、計画及び調達等の実施の進捗次第では完成が後ろ倒しとなる可能性が指摘されている。
(5)歳入強化
対GDP比で見て世界的に低い水準に留まっている歳入は、例年、年度当初の歳入目標を下方修正する傾向が続いている。来年度は、対前年度比15.8%増との目標が設定された。対前年度との比較で歳出が歳入を超えるペースで伸びた結果、財政赤字が急激に拡大しており、更に外国援助の比率の低下する中で、長年の懸案事項である歳入改革を通じた税収入の拡大をどこまで行うことができるかが財政の健全化に向けた大きなポイントである。予算演説では、短期的には所得税に関し脱税の減少及び納税手続きの簡略化を通じたベースの拡大を図りつつ、長期的には新たな法律の策定他を行い歳入行政の質の向上を通じて、関税及び補完税等の間接税に大きく依存する構造からの脱却を目指すとしている。
(6)年次開発予算
来年度の年次開発予算(ADP)は、2,650億タカで対前年度補正比22.7%増となった。これは例年通り2007年度の予算執行が進展せず同年度補正予算が下方修正されたためであり、前年度当初予算と比べ1.9%の増加に留まっている。結果、全歳出に占める来年度ADP予算の比率は30.4%と前年度補正に占める同比率32.2%より低下した。
予算関連資料は、 バングラデシュ財務省財務局ウェブサイトに掲載:
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