バングラデシュ政府2006-2007年度予算(概要とコメント)
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1.概要
(1)予算編成の基本方針
(イ)貧困削減戦略(PRS)に沿った予算編成(予算全体の56.3%を貧困削減事業に充当)を通じてミレニアム開発目標(MDGs)の達成を目指す。
(ロ)税制改革について、現在の歳入の対GDP比は11.3%と世界的に見ても低い水準となっているので、所得税の更なる拡充をはじめとする税制改革を継続して更なる歳入増を図る。
(2)予算の骨格と財政赤字動向
(イ)予算規模は6,974億タカ(対GDP比15%)と対前年補正比で14.2%増。うち、一般予算が4,372億タカで対前年補正比14.8%増、年次開発予算(ADP)が2,600億タカで20.9%増。開発予算の56.5%が国内資金、43.5%が外国援助。
(ロ)歳入は5,254.2億タカ(対GDP比11.3%)と対前年補正比17.1%増。うち、税収が4,291.5億タカで18.6%増、税外収が962.7億タカで10.7%増。税外収のうち、付加価値税が18.8%、輸入税が15.2%、所得税が22.1%とそれぞれ増加。
(ハ)新年度予算(一般予算+開発予算)では、社会開発セクター(含む教育、保健、女性の開発)に全体の43%を充当。教育・技術分野(15%)、運輸・通信(10%)、地方自治・農村開発(9.9%)、エネルギー(6.7%)、保健(6.6%)、農業(6.4%)に優先的に配分。
(ニ)ADP歳出では、地方自治・農村開発(21.2%)が最も配分が多く、次いで運輸・通信(16.8%)、エネルギー(16.1%)、教育・技術(14.6%)、農業(9.9%)、保健(9.0%)となった。
(ホ)今年度の財政赤字は、GDP比3.9%と当初予算見込みの同4.5%から減少。新年度の財政赤字は1,719.8億タカでGDP比3.7%を見込んでいる。
2.当館コメント
(1)サイフル・ラーマン財務大臣が予算演説の中で、貧困削減戦略を通じてミレニアム開発目標(MDGs)の達成を目指すことが予算編成における基本的な考えであると述べ、経済成長、社会開発、セーフティネットの拡充、民間セクターの促進、経済インフラの整備、経済ガバナンスの確保、法と秩序の改善等の優先分野への十分な予算配分と税制改革に関する政策の必要性を強調したように、新年度の予算は例年通り予算規模が大きく拡大され(14%増)、拡張型、強気の予算編成となった。
(2)演説は、来年1月の総選挙を意識し、各分野における過去5年間の実績に基づき現政権の有能性を国民にアピールする内容となった。来年度予算では、社会的に周縁化された層に対するセーフティネットの拡充、生活必需品の減税を通じたインフレの影響の軽減、補助金他による農業セクター支援の継続等の措置を講じ、国民の約半数を占める貧困層への配慮(新年度予算全体で56.3%が貧困削減事業に配分)を示した。
(3)歳出の拡張に応じ、来年度の歳入目標に関しても対前年度補正比17.1%増加と野心的なレベルに設定された。バングラデシュ政府は、Large
Tax-Payer's Unit (LTU)の拡大、税務オンブスマン制度の導入、及びチッタゴン税関の効率化等を通じた歳入増に向けた施策を打ち出したところ、今後の歳入改革の進展を注視したい。また、現行の歳入構造は、間接税に依存し、相対的に貧困層に大きな負担をもたらすもので、バングラデシュの中長期的な開発目標である貧困削減を達成するためには、高所得層の所得税率の引き上げによる所得再分配が必須。
(4)開発予算の予算執行率は低く、当初予算を期中に大幅に下方修正する傾向が続いている。配分された予算をいかに効率的・効果的に実行するかが大きな課題であるが、現在までのところ、課題解決の方策が明確に示されていない。特に来年度予算の執行においては、選挙を挟み、現政権、暫定政府、総選挙後の政権が関与し、予算執行に関し説明責任の所在が明らかにされないことが懸念される。
(5)経済面に関し、電力セクターの開発予算の配分が相対的に低レベルに留まり(対前年度比は5.6%の増加)電力不足の問題に対する十分な手当がされておらず中長期的な経済成長への影響が予想される。また財政赤字の充当のため国内資金の調達が増加する見込みのところ、右により民間セクターへの資金供給の圧迫及び高金利等、今後の民間投資へのマイナス影響が懸念される。
予算関連資料は、 バングラデシュ財務省財務局ウェブサイトに掲載:
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